北海道キャンプ場見聞録
積丹岳(2018/03/31)
爆風途中撤退
PM2.5の影響なのか、空は少し霞んでいるけれどまずまずの天気。
気温も高く、今日は久しぶりに積丹岳の山頂に立てるだろうか。
登るのは積丹岳の北尾根コース。
2年前のほぼ同じ時期にここを登っていたが、除雪終点の浄水場らしき場所は、その時よりも雪が多い感じだ。
メンバーは、朝里岳沢、ニセコ縦走に引き続いて、何時もの5人だけ。
I山さんが、クラブの掲示板で「体力のある方」と条件付きで参加者を募集するものだから、警戒されて他の人は参加してこないのである。
午前8時15分に出発。
牧草畑の中を横切りトドマツ林の中へと入っていく。
春先のこのような林の中は、折れた枝やマツの葉っぱ等でとても汚れている。
特にマツの枝は、そのまま踏みつけるとシールに松ヤニが付きそうなので、避けながら歩かなければならない。
途中からカラマツ林に変わったけれど、そこも小枝だらけである。
牧草畑を横切って林の中へ
トドマツ林の中の汚れた雪面
広葉樹林に変わると、雪面の汚れはそれほど目立たなくなる。
根開けの始まった広葉樹の森
広葉樹の森で春を感じさせるのは、幹の周りの雪が解けて穴が開く根開けと言われる現象である。
陽射しもあってポカポカと暖かいが、森の木々はその枝先が大きく揺れていた。
森の上では、かなり強い風が吹いているようだ。
今日は風が強い予報になっていたけれど、西風なので山に遮られてそんなに影響はないだろうと考えていた。
しかし、積丹岳は積丹半島の先端部に近い山なので、特に北尾根コースは風を遮るような山もなく、日本海から吹いてくる風が直接吹き付けているようだ。
標高500m付近で森を抜けて尾根の上に出てくると、その風をまともに受けるようになる。
時々、風が強まると体が大きく煽られる。
そんな時は、ストックで体を支えながら、風が通り過ぎていくのを待つしかない。
標高500m付近の尾根
急斜面のトラバース
700m台地はその東側をトラバース気味に登っていく。
結構な急斜面のトラバースだけれど、雪がまだ柔らかいので助けられる。
目の前に916mのポコが大きな山のように見えてくる。
そのずっと先に積丹岳の山頂も頭だけが見えていた。
空は相変わらず白く霞んでいる。
後ろを振り返ると積丹岬も見えていたが、その風景も霞みがちだ。
吹きさらしの広大な斜面へと出てくると、いよいよ風が容赦なく吹き付けてくるようになる。
北西向きの斜面なので陽射しの影響も全く受けずに、雪面は固く凍り付いたままである。
風に煽られバランスを崩して転ぶと、まるでコンクリートの上で転んだような衝撃を受けた。
今日滑る予定の斜面も同じ北西向きなので、雪の状態は同じだと想像できる。
正面に916mポコ、右端奥に積丹岳山頂
霞んでいるけれど積丹岬が見える
歩いた跡もつかない凍った雪面
身の危険さえ感じてしまう強風である。
途中で皆が集まっていたので「ここで撤退するかどうかを話し合っているのだろう」と思って喜んで近づいていったが、そんな話は全く出ていなかった。
そこからはスキーアイゼンを装着して登っていく。
2年前の時も、この付近では固い雪面に苦労させられたのだが、スキーアイゼンの威力は絶大だった。
その時よりも更に状態の悪い雪面なのに、それを全く苦にせずに登っていけるのだ。
916mポコから1121mポコへと続く尾根に向かって登っていく。
尾根に上がる直前はハイマツ帯になっている。
まるで迷路を抜けるようにしてハイマツ帯を通り抜け、ようやく尾根の上へと出てこられた。
今回はここで撤退
勿論、風はさらに強まる。
その尾根は途中で幅が狭まり、もしもそこで強風に煽られたら、凍った急斜面を滑落である。
さすがにそれ以上進むのは諦めるしかなかった。
本日の到達地点は標高980m付近、標高差およそ800mを2時間半で登ってきた。
私たちは登ってきたルートをそのまま滑り降りるつもりだったけれど、他の3人がここで諦めるわけはない。
目の前の急斜面を滑ろうと言い始めた。
そこを滑ったことがある人は誰もいなかったし、滑った後にどうやって元のルートまで戻るのかも分からないが、そんなことはこの人達にとって些細な問題でしかない。
ここを滑り降りる気らしい
ガリガリと音を立てながら滑り降りる
クレージーな3人とはここで分かれ、私たちは元のルートを滑り降りる。
溶けて表面がデコボコになったまま凍り付いた雪面だけれど、何とか滑ることはできた。
700m台地付近まで降りてくると、雪もようやく柔らかくなる。
表面だけが溶けたザラメ雪はとても滑りやすい。
これ以上溶けてくると、雪が重たくなってターンするのも一苦労なのだ。
風の当たらない場所で一休みする。
東斜面を滑り降りていった人たちは、今頃はそこを登り返していることだろう。
日が当たっているので、そこの斜面の雪も良い具合に溶けてきているに違いない。
表面が溶けて滑りやすい
風を避けて一休み
そこから先は、立ち木に衝突しないように慎重に滑り降りる。
そして12時15分には車まで戻ってきた。
スキーを片付けていると、間もなくして他のメンバーも降りてきた。
登り返しもしないで、途中からトラバースしながら登ってきたルートに戻れたらしい。
予定していたところは滑れなかったけれど、その代わりに良い斜面を開拓できて嬉しそうだった。
帰り際に積丹岳を振り返る
普通ならば登り返してもう1本滑るところが、I山さんが明日も目国内岳を登る予定だったので、手加減してもらえたらしい。
その目国内岳、私も誘われていたのだが、積丹岳に登った後では大変だからと一度はお断りしていた。
しかし、これだけ余力を残して降りてきてしまっては、明日の目国内岳を断る理由は無くなってしまったのである。