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前目国内岳(2016/1/16)

冬山で初体験


カヌークラブ新年会の初日に企画されたのは、先週も登っている目国内岳である。
その時は渡れなかったスノーブリッジも、今回はもう完成しているのだろうとの目論みだった。

現地へ向かう道中は、前の車のテールランプも見えないくらいの雪模様で、登る前から気疲れしてしまう。
朝6時前には家を出たのに、新見温泉に到着したのは8時30分の集合時間ギリギリになってしまった。
その時は少し天気も回復していたのに、登り始めると直ぐに雪が降り始めるのは、先週と全く同じ展開である。

林道を登る参加者は13名。
何時ものメンバーに加えて、クラブの新年会には何時も顔を出してくれる喜寿を迎えたK田さんご夫妻、この日のために密かに秘密特訓を重ねていたN島先輩、岩壁からの落下事故のダメージも癒えたmarioさんなど賑やかである。

ニセコ方面は先週末以来雪が降り続き、積雪も一気に増えていた。
林道には既にトレースが付けられていて、深い雪の中を楽に歩かせてもらう。

途中からそのトレースは、私達が渡ろうとしている新見の沢川に向かって降りていっていた。
トレースの主は男性3名のパーティー。
先週、私達が渡れるかどうかで悩んでいたスノーブリッジを渡ろうとしているところだった。
しかし、かなり苦労している様子である。

スノーブリッジを補強するが私達も別の場所を探してみたが、見かけは繋がっていても、薄い部分はストックを刺しただけで下まで突き抜けてしまう。
気温の低い日が続いているので、雪がいくら降り積もっても、スノーブリッジが固まらないのである。

男性3人パーティーが何とかそこを渡りきって「大丈夫ですよ!」と声をかけてくれたが、見かけはかなり危なっかしい。
スコップで雪を乗せて補強してみるが、それでも心許ない。
もしもそこから落ちたらロープ無しでは這い上がることもできず、13名全員が行きも帰りもここを渡らなければならないことを考えると、安全のためには諦めるのが最良の選択だった。

雪降る中を登る結局、またしても目当ての斜面に行く事はできず、先週と同じく前目国内岳を目指すルートを登ることとなる。
しかも今回は、先行パーティーのトレースも無く、雪深い中をラッセルしながら進まなければならない。
人数が多いので交代でラッセルしていけば大した負担にはならないが、何せ13名中9名が還暦を過ぎて戦力として当てにはできない人ばかりなのである。

そんな中で、ゲストとして参加していたS藤さんのお友達M澤さんが大活躍してくれた。
彼も、55歳と決して若くはないが、他のメンバーと比べるとパワーが全く違っている。
ラッセル隊長の肩書きが直ぐに付けられた。

新見峠を過ぎ森林限界を超える頃、雲の切れ間から日が射してきた。
その切れ間はどんどん広がって青空が顔を覗かせ、周りに広がっていた雲も何処へともなく消え去った。
先週はその存在にさえ気が付かなかった白樺山が、皆の背後に忽然と姿を現す。


青空が見えた 日も射してきた
前方に青空が! 影ができるくらいの陽射しも

白樺山が背景に
背後に突然、白樺山が姿を現した

前目国内岳そして前方には前目国内岳ばかりではなく、前回は一度も姿を見られなかった目国内岳の山頂まで見てとれる。
適当なところまで登って滑り降りる予定だったけれど、太陽に照らされ真っ白に輝く前目国内岳を前にして「せっかくだからその山頂まで登りましょう」とI山さんが言いだした。

しかし、既にこの時、K原さんの太腿は限界に達していたのである。
シーズン最初に大黒山を一緒に登った時、平らな林道を歩いただけで悲鳴を上げていたK原さん。
次にキロロ989峰に登った時は、途中で金具が壊れ、その後1本足で下まで滑り降りて悲鳴を上げていた。

新しい板と金具を買い揃え、3度目のチャレンジとなった今回は、前2回に登った距離と標高差を既に上回り、悲鳴を上げる力も残っていないようだった。
そこで、山頂手前の肩まで登り、そこにK原さんを残し、他の全員で山頂アタックを試みることとなる。

滑走準備中しかし、その青空もやはり長続きはしなかった。
あっという間に湧いてきた雲が前目国内岳の姿を掻き消し、それと同時に横殴りの雪が降ってきた。
山頂アタックは直ぐに諦め、手前の肩まで登ってそこから滑り降りることに変更。

ここ最近、シールを剥して滑走準備をしている時は毎度こんな天気である。
冬山訓練として、悪天候下で素早く準備をするのは必要な事であるけれど、できれば勘弁して欲しい。
私達が準備をしている間に、大きく遅れていたK原さんが苦痛に顔を歪めながら追いついてきた。

そこからは、先週滑った谷筋の斜面を目指して滑り降りていく。
最初の方は傾斜が緩く雪も深いので、殆んど直滑降でしか滑れない。
あれだけ苦労して登ってきた標高差を直滑降で滑り降りるのだから、K原さんにしてみれば「あの苦労は何だったんだ」って気分だろう。

ようやく斜度のあるところまで辿り着いたが、その楽しい斜面もあっという間に終わってしまった。
ふわふわのパウダースノーでとても気持ちは良いのだけれど、それまで登ってきた労力と天秤にかければ、全く釣り合っていないのは確かである。

雪の中の滑走前回はここからもう一本登り返して滑ったけれど、K原さんにそんな力は残っていず、今日はこれで終わりにすることになった。
しかし、登ってきたルートに戻るためには、ここから長距離をひたすらトラバースするか、それとも少し登り返してからその方向に滑り降りるかである。
比較的楽なのは登り返す方だったけれど、どちらを選ぶかはK原さん次第だった。

少し休んで体力も回復したようで、K原さんの選択は登り返しだった。
ここでもラッセル隊長のM澤さんが活躍して、ルートを切り開いてくれる。

この登り返した斜面が、ダケカンバの疎林で斜度もあり、滑るには最高の場所だったのである。
その斜面を眺めるだけで帰らなければならないのでは、皆も悔しそうだった。

実はこの斜面は、前回気持ち良く滑られなかった反省から、もっと良い場所が無いかとGoogle Earthで調べて私のGPSに登録してあったのである。
出しゃばるのが好きじゃない私は、何時も他のメンバーの選択に任せていたけれど、ここだけは出しゃばった方が良かったかもしれない。


ルート図
Google Earthで見るとこんな感じ

K原さんも遅れ気味ながら頑張って登ってきていた。
しかし、ここで頑張れなくなったのが私だった。
今日は登り始めた頃からずーっとお腹の具合が悪かったのだけれど、それがもう限界に達していたのだ。
イメージ皆に先に行ってもらい、私は急いで斜面の陰へと入る。
そんな時に限って天候は吹雪模様になっていた。

自慢するわけではないが、私は普通の人よりは野○ソの経験は多い方だと思う。
でも、雪の中での野○ソは初体験だった。
スキー靴を履いていると完全にしゃがむことはできず、所謂スキー滑降のクラウチングスタイルしかとれない。

意外と寒さは感じず、眼下に広がる雪山の風景がとても美しかった。
しかし、不安定な急斜面の途中である。
下半身を露出したままここを転がり落ちたら、生きては戻れないかもしれない。
失礼かもしれないが、黒岳で遭難した女性登山家の事が頭を過ぎった。

無事に皆のところまで戻り、ようやく登りのトレースと合流できた。
K原さんは滑りは上級者なので、足の筋肉はボロボロでも後は何とか麓まで滑り降りられそうだ。
これで全員無事に帰れる見込みができたが、今度はN島さんが苦労することとなったのである。

雪まみれのN島さん秘密トレーニングが功を奏し、他のメンバーを引っ張るくらいの勢いで登っていたN島さんの体力が、ここに来て完全に失われてしまったのだ。
後は滑り降りるだけとは言っても、小さなアップダウンも多く、おまけに樹木も密生しているので、それなりのテクニックと体力も要求されるところである。
滑りの方のトレーニングはしていなかったようで、おまけに体力も無くなり、何度も転んでしまう。

一度転ぶと、底無しの雪なので簡単には起き上がれず、余計に体力を消耗する。
とうとうN島さんの口から「俺が起き上がった後に直ぐに滑り出すのは止めてくれ。休む暇がない。」との弱音がこぼれた。

そんな事もありながら、何とか全員無事に新見温泉まで戻ってくることができた。
その頃になって再び青空が広がり始めるのが、何とも憎らしい。

戻って来たら青空 滑りは全く楽しめなかったけれど、山岳部の新年会ではなくカヌークラブの新年会なのだから、この程度で良いだろう。
レスキューしたりされたりしながら川を下っている時と同じく、山のツアーもこうして助け合いながら登ったり滑ったりするのである

宿泊は五色温泉の別館で自炊。
温泉で汗を流した後は、かみさんが腕をふるって3種類の鍋を作る。
日ごろの写真撮影のお礼にとS藤さんが私達にドイツビールをご馳走してくれた。
何種類かを味見しているうちに、スキーの疲れと昨日も飲み会だったこともあり、早々に撃沈。
7時には早々と寝てしまった。

GPSトラック) 


五色温泉別館で 料理中のかみさん
五色温泉別館の食堂を貸し切り 一人頑張るかみさん

新見温泉9:00 - 滑走開始地点11:50 − 滑走終了地点12:20 - 新見温泉14:50 



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