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千尺高地(2014/03/09)

ラッセルはおまかせ


インフルエンザに罹ってしまった影響で、3週間ほどの間、アウトドア活動から遠ざかっていた。
もしもこれが無ければ、山スキーに2回、流氷キャンプに1回は行けていたかもしれない。
楽しく遊ぶためには健康であることが一番大切であると、改めて思い知らされた気がする。

旧豊羽鉱山へと続く道そうして、3週間ぶりに満を持して出かけることにしたのが千尺高地。
もっと遠くまで出かけたいところだが、爆弾低気圧の影響が週末まで残って、山に登れるかどうかも分からない天気だった。
かろうじて日曜日の午前中だけは札幌南部で晴れ間が広がりそうなので、それに期待して千尺高地を選んだのである。

途中では視界が利かなくなるくらいの雪も降ってきて、先行きが危ぶまれたものの、現地に到着する頃には雪も止んで青空ものぞき始めていた。

しかし、車から降りると猛烈な風が吹き付けてきて、「本当にこんな日に山に登るの?」と、かみさんが早速弱音を吐いてくる。
そんなかみさんを無視して出発準備をしていると、2台の車が次々とやってきた。
どちらにも、私達と同じくらいの年代と思われる男女が乗っていた。一方の男女はワンちゃん連れである。

千尺高地に登るのは6年ぶりだった。
その間、何度か登ろうと思ったが、旧豊羽鉱山までの道が通行止めになっていることが多く、間が開いてしまったのだ。
登り口の様子2年前にも途中まで来て通行止めになっていたことがあり、今回も天気のことより登山口まで行けるかどうかの方が心配なのである。
何せ、旧豊羽鉱山までの道は何処で雪崩が起こってもおかしくない様な所なので、途中で土木業者さんの車が数台停まっているのを見た時には、また今回も引き返すのかと覚悟してしまったくらいだ。

6年前には登り口の隣に建物があったはずだが、今は更地に変わっていた。
豊羽鉱山が完全に閉山してしまうと、ここまでの道路も除雪されなくなり、そうなると千尺高地や隣の大沼山へは登れなくなってしまう。
今回千尺高地を選んだのは、そんな理由もあったのである。

一番最初に準備の整った私達が先頭で登り始める。
土曜日に登った人のトレースがあるかも知れないと期待していたが、さすがに昨日の天気では誰も登ってはいなかったようである。
先頭でラッセルするかみさん深いところでは膝以上の雪をラッセルしなければならない。
昨日は、2か月後に迫った洞爺湖マラソンに備えて、2週連続で3時間走を走っていた。
その翌日なので、体力が心配だったが、久しぶりのラッセルが逆に足の筋肉に心地よい刺激を与えてくれる。

ここを登る時、尾根上に小さなコブがいくつかあるので、帰りに登り返しにならない様に、そのピークを上手に巻いて登らなければならない。
6年ぶりなので記憶も定かではない。
変なトレースを付けてしまうのも格好悪いので、GPSに登録しておいた6年前の軌跡を何度も確認しながら、慎重にルートを選んでいく。
できれば、詳しい人に先頭を代わってもらいたいところだけれど、ラッセルしながらでも私達の歩くスピードは速いみたいで、後ろからはなかなか追い付いてこない。
ルート選択に気を使うけれど、人の後ろを歩くよりは、何もない場所をラッセルしながら進んでいく方が気持ちが良いので、追い付かれない様に登っているのも確かなのである。

日が射してきた844mのコブを過ぎて次の登りにさしかかった時、日が射してきて周りの風景を美しく照らし出す。
そんな風景を撮影していると、犬連れの男女が追い付いて来たので素直に先を譲ることにした。
インターネットで山スキー関連のサイトを見ていると、レトリバーと一緒に登っている人のページをたまに見かける。
面識はないけれど、多分そのページのご夫婦なのだろう。
確か、ご主人の方は本格的な山登りをされる方だったはずなので、先頭をまかせると心強そうである。

でも、少しするとそうでもなさそうな気がしてきた。
かなり辛そうにラッセルしているのである。
私は敢えて間隔を開けて登っていたけれど、かみさんの方は、如何にも追い抜きたそうな様子ですぐ後ろにピタリとついて登っている。

山頂に着いてから分かったのだが、そのワンちゃんはやっぱり、私がホームページで知っているジェイ君だった。
でも、男性の方は、旦那さんではなく知り合いの方だったみたいだ。
途中からはその男性を追い越して、女性の方と私たち夫婦が交代でラッセルしながら登っていくことになった。


ラッセル交代 ラッセル交代
ラッセル交代 ジェイ君も一緒に登る

後ろから煽りまくるかみさん最後の壁を私が先頭で登った後、もう一組のご夫婦の御主人に先頭を譲る。
今度もまた、かみさんがその後ろにピタリとくっついて登っている。
多分、その男性は、これまでラッセル役をやっていなかったので、気を使って先頭で登ってくれているのだろう。
かみさんもそれが分かっているので、敢えて追い抜かさないで我慢しているのだろうが、それならばもう少し間隔を開ければ良いのにと思ってしまう。
どう見ても、追い越し禁止の道路で前を走る遅い車にイライラしながら煽りまくっているトラックの運ちゃんなのである。

車から降りた時にかみさんの心を折りそうになった風は、登っている間はほとんど気にならなかった。
しかし、大沼山から千尺高地山頂へと続く尾根の上まで登ってくると、再びその強風が襲いかかってくる。
千尺高地山頂それでも6年前と比べれば大したことはなかった。
それに、一番の違いは、今回は青空が見えていたことである。
7年前にも登っていたけれど、その時も山頂は雲の中だった。
天気についてはあまり期待していなかったのだが、これだけ晴れていれば御の字だ。

2時間20分ほどで千尺高地山頂に到着。
無意根山の上空は雲に覆われていたが、札幌の街の方向には青空が見えている。
その青空の下には、険しい山容の定山渓天狗岳が聳えていた。
天狗岳はここから眺める姿が一番美しいかもしれない。


定山渓天狗岳
札幌方向は青空が広がる、中央の山は定山渓天狗岳

無意根山
無意根山の上空には雲が広がる

風を避けるため、山頂の北側にできた雪庇の下に入って、そこで休憩する。
他の2組も一緒である。
ザックの中からおにぎりを取り出すと、ジェイ君が寄ってきておねだりをする。
雪庇の陰で休憩「すいません」と奥さんに謝られるが、ジェイ君のそんな様子を見ていると、死んだフウマのことを思い出して嬉しくなる。

食事を終えると、後は目の前の急斜面を滑り降りるだけだ。
6年前は視界も利かなかったので、登って来たコースをそのまま滑り降りていたけれど、この北側の斜面を滑って、標高900m付近で、登りのトレースに合流するのが良いらしい。
雪崩が心配だったが、最初にご夫婦がそこを滑ったので、それで安心できた。
その後をジェイ君組が滑り、私達も後に続く。
少し重たいけれど、底なしのパウダーである。
時々バランスを崩しながらも、何とかスキーを曲げることができた。
今シーズン、自分でも少し成長できたかなと感じるのは、滑らかな曲線のシュプールを描ける様になったことかもしれない。
去年までは自分の滑った後を見てガッカリしていたのが、今年はニンマリと笑みが浮かぶのである。


パウダー滑降
気持ちの良いオープン斜面を滑り降りる

パウダー滑降 パウダー滑降
無垢の斜面にシュプールを描く トラバース気味に登りのトレースを目指す

定山渓天狗岳
この付近から見る定山渓天狗岳は本当に格好良い

余市岳方向
左に見える余市岳は今日も強風が吹いていそうだ

この沢を越えるのに一苦労トレースと合流する手前にちょっと深い沢があって、そこを渡るのに少し苦労した。
ご夫婦の奥さんと、ジェイ君組の男性が、それぞれ転んでしまって、起き上るのに悪戦苦闘していた。
何せ、底なしの雪なので、一度転んでしまうと起き上るだけでも大変なのである。

登りのトレースに合流した後は、その中を一気に滑り降りる。
慎重にルートを決めたつもりが、所々でちょっとした登り返しになっていた。
まあ、ここで一定勾配で滑り降りれるようなルートを作ろうとしたら、水準測量が必要になってくるだろう。

下まで下りてくると、広かった駐車スペースは車で埋まり、横の広場は一面にスノーモビルの轍だらけになっていた。
そこからどこに登って行ったのかは分からないが、遊ぶフィールドが重なっていなかったのは幸いである。

道路を埋める雪崩帰り道、車道が半分以上埋まるくらいの表層雪崩の現場に遭遇して驚かされた。
朝に通過した時は大丈夫だったのに、日中の気温の上昇が雪崩を引き起こしたのだろうか。
この日のニセコ雪崩情報を見ると、周辺の山も含めて雪崩リスクは非常に高いとされていた。
ニセコとこことでは条件は違うかもしれないけれど、道路際の雪崩の状況を見ると、私達が滑った斜面でも雪崩リスクは高かったのかもしれない。
自然の中で遊ぶ時は、注意は怠れないのである。


登山口 山 頂
2:20
距離:3.3km 標高差:550m


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