北海道キャンプ場見聞録
塩谷丸山(2012/1/15)
寒波に負けず |
寒波の底からなかなか脱せない北海道。今週末も最高気温はマイナス5度を下回ったままで、山の方では西風が吹き荒れていそうだ。 山スキーに出かけようとの気にはなかなかなれないが、この程度で家の中に引き籠っていては、冬の間はどこにも出かけられないことになる。 そこで、家から近くて、頂上まで簡単に登れて、展望が効かなくても滑りを楽しめるような山はどこかに無いかと考えてみる。考えるまでもなく、思いつくのは塩谷丸山しかない。毎年1度は必ず出かける、我が家お気に入りの山なのである。 晴れ間が広がったり、吹雪いてきたりと、塩谷駅まで来る途中にも、天気は目まぐるしく変わる。そして塩谷駅の駐車場では、曇り空でチラホラと雪が舞うような空模様だった。 最近は、地元の住民の方の迷惑とならない様に、少し遠くなるけれど駅の駐車場に車を停めるようにしている。山に登る人間が、10分や15分、長く歩くのを面倒臭がっていてはダメだと思う様になってきたのだ。 ザックにスキー板を取り付けて住宅地の横を登っていく。 朝の太陽が雲の隙間に姿を現す。 15分ほどで除雪終点に到着し、スキーを履く。時間は8時。塩谷駅の駐車場にも、来る途中にも他の車の姿は無く、今回も私たちが一番乗りのようだ。 しばらく大雪は降っていないので、しっかりとしたトレースが残っていた。その中でも昨日のトレースは、雪が全く積もっていないので見分けがつく。 土曜日だったけれど、それ程多くの人は登っていないようだ。スノーシューと山スキー、それぞれ一人か二人くらいだろうか。 積雪も多く、森の木々はその枝にたっぷりと雪を積もらせている。同じ冬山を登っていても、木々が雪化粧しているかどうかでその雰囲気は全く変わってしまう。 真っ白な風景の森の中は、歩いているだけで楽しくなる。 林道から離れ、スノーブリッジで小さな沢を渡ると、その先から林間のやや急な登りとなる。 林道上は1本道だったのが、そこへ来ると上から滑り降りてきた跡も混ざって、どれが登りのトレースなのか判然としなくなる。 私たちにとっては登り慣れている場所でもあるので、自分たちの登りたいルートにあるトレースを順番に利用しながら、登っていく。 次第に青空が広がり、白い森の中にも陽が射してくる。そうすると、ただでさえ美しかった森の風景が、更に美しく見えてくる。青空は全く期待せずに登り始めたので、予想外の展開に心が弾む。 沢の源頭を横切る部分ではそれまでバラバラだったトレースがほぼ1本にまとまっていたので、私達もそのルートを歩く。ところが、そこを渡って最後に300m大地のアカエゾマツ林へ登るところがやたらに急で苦労させられる。今までこんなところで苦労したことは無く、変だなと思いながら周りを見渡すと、そこよりもっと上の部分に別のトレースが残っていた。他人のトレースが常に正しいものとは限らないのである。 300m大地のアカエゾマツの前に来ると必ず写真を撮ってしまう。その美しい姿を見るとカメラを向けずにはいられない。 そこからいよいよ本格的な登りが始まる。斜面の手前には沢山のトレースが見えているけれど、スノーシューのものが多いようだ。先ほどの沢を渡るところでもそうだったけれど、スノーシューの場合、少しくらい急なところでも平気で登ってしまう。そのために、山スキーでスノーシューのトレースを追っていると、途中で行き詰ってしまうことがある。 そこで、斜面の裏の方へ回るスキーのトレースを見つけ、私たちはそのルートで登ることにした。ところが古いトレースだったので、その先で消えてしまい、その後は膝まで埋まる深雪をラッセルしながら急な斜面を登る羽目になる。 これだけトレースだらけの斜面をラッセルしながら登っている自分が馬鹿みたいに思えてくる。苦労してトレースだらけの斜面に戻り、後は素直に他の人のトレースに従うことにした。 気温は相変わらず低いはずだけれど、太陽の陽射しと急な登りの連続で汗が噴き出してくる。でも、頂上が近くなった辺りから吹き付けてくるであろう強風のことを考えると、ここで1枚脱ぐのも面倒なのでそのまま歩き続ける。 できればこの辺りで一休みしたいけれど、先を登っているかみさんがどんどんと先に行ってしまうので、その後を必死に追いかけるしかない。 |
黙々と登るかみさん | この林を抜けると展望が開ける |
最後のやや密度の濃い樹林を通り過ぎると、後は頂上に向かって一直線の直登である。何も遮るものが無くなり、山を越えてきた風がまともに吹きつけてくる。 ハァハァ息をしながら一歩一歩登っていく。 一番に登り始めても、この辺りで後続の登山者に次々と追い越されるのが私の何時ものパターンだけれど、今日は下には誰の姿も見えていない。 途中からトレースも完全に無くなり、吹きだまった固めの雪面に変わる。ウサギの足跡も、雪面が固くて跳ねやすいのか、その間隔がやたらに広い。 |
風に耐えながら登り続ける | 太陽も雲に隠れてしまいそうだ |
登っている間は後ろの風景にも気が付かない |
そうして、塩谷駅の駐車場を出てから1時間50分。かみさんからやや遅れて山頂に到着。 これはかなり速いペースだと喜んでいたら、帰ってから雪山ガイドを見ると標準タイムが1時間55分。大して速い訳ではなかったようだ。 登ってくる途中よりも青空の面積は小さくなっていたけれど、石狩湾の上空にだけはまだ青空が残っていた。でもその下には雪雲がびっしりと垂れ込め、石狩から岩見沢にかけては相変わらず雪が降り続いているようである。 積丹から余市岳方向は完全に雲の中である。余市の市街地も雲に隠れ、かろうじてシリパ岬にだけ太陽の光が当たっている。 でも、今日は視界ゼロの状態も覚悟して登ってきたので、これだけ見えれば十分に満足できた。 |
余市方向はシリパ岬にだけ陽が当たっている | 一番乗りかと思ったら先客がいたようだ |
山頂からは塩谷漁港の眺めが一番良かった |
風を避けられる山陰まで下りてシールを剥がす。 登ってきた尾根には沢山のトラックが刻まれていたけれど、私達がこれから滑ろうとしている沢の斜面は誰も滑っていないようである。一番乗りをすると、こんな嬉しいご褒美があるのだ。 その真っ白な斜面に最初のシュプールを描く。ところが、風で飛ばされた雪が積もっているようで、雪が重たく、思ったような滑りができない。 スノーボードの男性が一人、登ってきた。彼は多分、ここを最初に滑ろうと狙っていたのに、私達が先に滑っているのを見て、さぞガッカリしたことだろう。 途中からかみさんを先に滑らせ、下から動画を撮ってもらうことにした。ところが今度も上手く滑れない。カメラを構えていたかみさんから「せっかく真っさらな斜面を残しておいてあげたのに、酷いシュプールね!」と、散々馬鹿にされた。 フワフワのパウダースノーならば何とか滑れるけれど、雪質がちょっとでも悪くなると、直ぐに実力が現れてしまう。もしかしたら、どんな雪質でも何時も同じ滑りをするかみさんの方が、私よりスキーが上手なのかもしれない。 途中から、次から次へと登ってくる登山者とすれ違うようになった。やっぱり日曜日は、早く登るに限る。 滑りを楽しんだ後、森の中では、ツルアジサイの花がらなどを撮影しながら、のんびりと下って11時には塩谷駅の駐車場まで戻ってきた。 気軽にやってきて、楽しく遊べる。塩谷丸山は本当に良い山である。 |
雪を被ったツルアジサイの花がら | 雪の上に落ちたツルアジサイの花がら |
塩谷駅駐車場 | → | 除雪終点 | → | 300m台地 | → | 山 頂 | ||
0:15 | 0:45 | 0:50 | ||||||
下り 0:45 | ||||||||
距離:3.5km 標高差:595m |