しかし楽しめるのはそれだけだ。
札幌の街並みはちょっと霞んでいるし、定山渓天狗岳や鳥帽子岳もぼんやりとその輪郭が見えているだけ。
それよりも寒さに耐えかねて、まずは風を避けられる場所まで下りて、そこでスキーのシールを剥がす事にする。
その途中でまた、スノーシューで登ってきた初老の男性とすれ違った。
「寒いのでここで引き返す事にした」と言うと、「もう少しなのに勿体無いね〜」と言われてしまった。
適当なところまで下りてきたところで雪を踏み固め、スキーを外し、さてシールを剥がそうとスキー板を持ったところで、一瞬頭の中が混乱してしまった。
「あれ?何時の間にシールを剥がしたんだろう??」
剥がしたのではなく、ここまで滑ってくる途中で剥がれ落ちてしまったという現実に直ぐに気が付く。
「それにしても何時?」
シールが剥がれても気が付かないなんて、ちょっと信じられなかった。
探しに戻ろうとしたけれど、片方だけのシールではちょっとした登りでも滑って歩けるものではない。
かみさんが代わりに探しに戻ってくれたけれど、手ぶらで帰ってきた。
この先、大きな登り返しがある訳でもないので、痛い落し物をしたと思って諦める事にする。
気を取り直して滑降開始。
林間の楽しい区間はあっと言う間に終わってしまった。
その後は送電線下の刈り跡を滑るのだけれど、これが酷かった。
今年は雪が少ないのだろうか。
斜面はデコボコで、潅木が密生し、まともに滑れる場所が殆どない。
おまけに40度くらいはありそうな急斜面、斜滑降とキックターンで下りるしかない。
しかし、かみさんの場合はキックターンができないという致命的な欠点があるため、その斜面を横滑りで落ちるしかなかった。
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