雪の重みで大きくたわんだシラカバが、まるでゲートのように私達を出迎えてくれた。
そのゲートは急斜面の始まりを知らせるゲートでもあったようだ。
しっかりと踏み固められたトレースは滑りやすく、ちょっとでも傾斜がきつくなると私のスキーはズルズルと後ろに後退してしまう。
同じシールを貼っているのに、かみさんはスリップすることも無く、同じトレースを平気で登っていく。
僅か1メートルの高低差を登れずに四苦八苦している私を「邪魔よ!」とばかりに追い抜いていった。
スキーがスリップし始めると、余計な力を使わなければならないので、体力の消耗も激しくなる。
冬のシーズン前にたっぷりとトレーニングをしていたので、体力はかなり付いたつもりでいたのに、その自信はあっけなく崩れてしまった。
これでは今までの冬と何の変わりも無いのだ。
沢の源頭部まで登ってくると下界の風景が見下ろせるようになる。
登り始めた頃には青空が大部分を占めていたのに、いつの間にか雲の割合の方が多くなっていた。
海の色も鉛色だ。
その先の立派なエゾマツの森(300m台地)を過ぎると、木々も次第にまばらになってくる。
相変わらず固いトレースは滑りやすく、その傾斜を見ただけで「あ〜、これは駄目だ〜」と判断が付いてしまう。
堪らずにトレースから外れて、自分でラッセルしながら登ることにした。
確か、以前に塩谷丸山を登った時もこんな羽目になっていた気がする。
他の人が見たら「何でわざわざトレースから外れて登っているのだろう?」と思われそうだが、スリップを繰り返しながらトレースの中を登るよりは、私はその方が確実に楽なのである。
樹林帯を抜けると頂上まではもう少し。
先に登っていた4人パーティーが途中で休んでいた。
これまでも、なるべく追い越さないようにしながら、相手が休憩していれば自分達も休憩するようにして登ってきたのだけれど、このまま一気に頂上まで登ってしまいたい気もする。
ザックを降ろして長そうな休憩のように見えたので、私達は休まずにそのまま登り続け、挨拶をして先に出ることにした。
しかし、山頂へ向かって一直線に続くトレースは、途中から私のスリップ限界を超える傾斜となり、再び四苦八苦することに。
ふと後ろを振り返ると、しばらく休んでいると思った人達が、直ぐ後ろから登ってきていた。
これだから、あまり追い抜きたくなかったのだ。
スリップしながらドタバタしているのを見られるのは恥ずかしいので、写真を写す振りをして何気なくトレースから外れ、後続の人を先に行かせた。
かみさんがその4人パーティーを先導するようにして先に登っていってしまい、残された私は写す気も無いのに、意味も無く周りの風景にカメラを向け続けるのであった。
チラチラと雪も舞い始める中、ようやく山頂に到着。
空は曇っているものの、これまで塩谷丸山に登った中では風の穏やかさは一番かも知れない。
何せ、塩谷丸山の山頂は風の強いイメージしかないのである。
しばらくすると青空も広がってきたが、それでもまだ雲の面積の方が多い。
こちらの方は何時もと同じ按配である。
一度で良いから真っ青な空の下でここの山頂に立ってみたいものだ。
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