楽しみにしていた流氷キャンプ、諸般の事情によって断腸の思いで中止する決定を下したところ、「それじゃあ明日は天気が良さそうだから、何処かへ山スキーに出かけましょう!」と、まるで流氷キャンプなんかへ行くより山スキーの方がずーっと楽しいといった様子で提案してくるかみさん。
「もしかしたら流氷が接岸しているかもしれないし、行くだけ行ってみましょうよ。」とか言ってくれたら、キャンプ翌日の天気が大荒れになるとの予報も気にせず大手を振って流氷キャンプへ出発していたのに、あっさりと予定は変更されてしまった。
今回の山スキーは春香山へ行くことにする。山スキーを始める前は、札幌近郊でスキーを履いて登る山といえば春香山くらいしか思い浮かばなかった。それもオーンズスキー場のリフト終点から登るものだと思っていたら、桂丘の住宅地の奥から登山道があるらしい。
それほど簡単に登れる山でも無さそうなので、これまで候補地には上ってこなかったのである。
家を出る時はどんよりとした曇り空で、手稲山の山頂も雲に隠れてしまっていた。
今日は最初から山スキーのトレーニングのつもりで考えていたのでそんな空模様も大して気にならない。
国道5号線から桂岡の住宅地へ続く道へ曲がった。
山登りをしていなければ来る機会の無い場所である。札幌市内でも見たことのないようなカツラの立派な街路樹が通りを飾っていた。
カツラは私の好きな樹種でもあるので、「こんなところにこんな立派なカツラ並木が有ったんだ!」とちょっと感激したが、考えてみれば桂岡にカツラの街路樹、至極当然の話である。
住宅地が終わり少し山の中に入ると、車10台ほどが停められるくらいに広く除雪してあるスペースがあった。
そこを通り過ぎて除雪終点まで行ってみたけれど、既に2台ほど停められていたので、広いほうの場所に車を停めることにする。
そこではスノーモービルの男性が出発準備をしていた。そのエンジン音がとてもやかましく、低騒音のスノーモービルって無いのだろうかと思ってしまう。
準備を整え7時50分に出発。
除雪終点では男女4名のグループが準備をしているところだった。挨拶をして先に進む。
さすがに人気の山らしく、そこから先の林道はスノーモービルやスキー、スノーシューなどで踏み固められ、つぼ足でも問題なく歩けそうである。
川沿いにしばらく進み、途中から橋を渡って谷あいの林道へと入る。どういう訳かやたらにデコボコがあり、まるでスキー場のこぶ斜面の中を歩いている感じがする。
殆どスノーモービルが付けたようなザラザラのトレースの中を歩くより、そこを外れた雪の中を歩いた方が楽である。
やがてその林道は沢から離れて、カラマツ林の間を縫いながら山の斜面を登り始める。高度を上げるにしたがって、山に遮られていた空が次第に広がってくる。
その空からは、いつの間にか雲が消えていた。これまで、朝の天気が良すぎる時は決まって途中から雲が広がりガッカリさせられていたが、今日は完全にその逆である。
気温も上ってきたようで、上着を脱いでいても顔に汗が浮かんでくる。半そでTシャツ1枚でも良いくらいの陽気である。
斜面をジグザグに登る林道をショートカットするように、林の中に登山道が付いているようだ。カラマツ林の中に延びるその登山道を見ると、結構傾斜がきつそうなので私達はそのまま林道を進むことにした。
迷沢山に登った時、林道をショートカットしたおかげで大変な思いをしたことがあったし、少々遠回りでも楽に登った方が体力を消耗しないで済むのである。
スノーモービルの耳障りな騒音が次第に近づいてきた。林道の上で追い越されて、排気ガスでも吸わされたら堪らんな〜と思っていたら、そのスノーモービルは林の中を真直ぐに登ってきたようで、私達の歩くかなり前の方にぴょんと飛び出してきて、そのまま林道を走っていってしまった。
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