北海道内のアメダス観測地点でまだ積雪があるのは4箇所だけ。
庭では水仙が花を開き、1週間後には桜も開花しそうだというのに、その4箇所の中の一つである朱鞠内へキャンプへ行こうというのだから、我ながら天の邪鬼な性格だと思ってしまう。
いくら気温が高くなっても、この時期の北海道は何処へ行っても冬枯れの味気ない風景が広がっているだけだ。それならば、白い雪の風景の方がまだ面白そうである。
それに、雪解けが急速に進む季節の朱鞠内湖へはまだ行ったことがない。もしかしたら、砕氷船のように氷を割りながらカヌーに乗るような楽しい経験もできるかもしれない。
そんな事を考えながら朱鞠内湖へと車を走らせた。
札幌を出てからずーっと続いていた茶色い風景が、幌加内峠を越えると一変した。
数週間前までは見慣れていたはずの雪景色に、何か懐かしささえ感じてしまう。
それでも、アメダスでの幌加内の積雪は数日前に0センチになっているだけあって、市街地周辺に広がる蕎麦畑では真っ白な風景の中に染みが広がるかのように土が顔を出し始めていた。
そんな風景の中の所々に、何やら白い大きな塊が転がっているように見えている。
何かなと思ったら、それは土が出てきた蕎麦畑で餌をついばむハクチョウ達の姿だった。
新たな幌加内の一面を発見したような気がして嬉しくなる。
朱鞠内湖へ向かう途中、昼食に蕎麦を食べるのも楽しみの一つである。
今回は道の駅「森と湖の里ほろかない」の中にある「玄蕎麦処○(まる)」に入った。ここの打ちたての蕎麦もなかなか腰があって美味しい。
朱鞠内に向かうに従って次第に雪深くなってくる。
雨竜川を渡る橋を通ると、川の水面で沢山のハクチョウが羽を休めているのが見えた。
幌加内付近で餌を食べていたハクチョウは夜は何処で眠るのだろうと不思議に思っていたけれど、どうやら川の上をねぐらにしているらしい。
真っ白なハクチョウが浮かぶ雨竜川はの水は、増水して茶色く濁っていた。
今日はこの雨竜川でもカヌーに乗ろうと考えていたので、ちょっと気が重くなってしまう。
そうして朱鞠内湖に到着。
手前の坂を上り終えたところで目の前に一気に広がる湖の風景。「今時期は一体どんな様子なのだろう」と、いつも以上にワクワクしながら坂を登っていくと、そこに広がっていたのは初めて見る朱鞠内湖の表情だった。
一瞬、解け残った氷が湖面全体に浮かんでいるのかと思ったが、直ぐにそれは凍った湖面全体に雪がまだらに残っているのだと分かった。
冬の間、ワカサギ釣りの客をスノーモービルで送り迎えしていた跡が、そのまま白い道のように湖面を走っている。
これでは湖でカヌーに乗る事はできないけれど、こんな朱鞠内湖の表情を見られただけでも得した気分だ。
|