今回の川下りも、北海道ウィルダネスカヌークラブ7月例会への参加である。
空知川と言えば、我が家が川下りを始めて間もない頃、チャレンジ候補の一つにノミネートしていた川の一つである。
しかし、一度付近の橋の上から流れの様子を見て、「こ、これはちょっと・・・」と怖じ気づいてしまい、チャレンジをパスしてしまったのだ。
それが今回は、カヌークラブの猛者達の後ろ盾が付いているものだから、「こいつめ、前回は大きなツラしやがって、今度はお前がおいらの下にひざまずく番だぞ。」と、まるで虐められっこが大きなお兄ちゃんの後ろに隠れて威張っているような感じで、堂々と(?)挑戦できることになった。
出発地点は新生橋の直ぐ横、キャンプ場へ行く前に一度下見をしていたが、川はその橋の遥か下を流れていて、いったいどこから出挺するんだと疑問に思っていた。
答えは、橋の直ぐ横から急な崖を降りるのである。とてもじゃないが大きなカナディアンをそこから下ろすのは無理だと感じたが、クラブの人達がロープで補助してくれるので、何とか狭い河原までカヌーを降ろすことができた。
出発前のミーティングで、自信のない人は手を挙げてくださいといわれ、サッと元気良く手を挙げたが、手を挙げているのは私たちキャンパー組だけである。
今回は皆、ヘルメットまでは購入していたが、後はいつものそれぞれバラバラな服装。「ベテランの方はサポートよろしくお願いします」との言葉に、みんなで小さくなって頭を下げた。
スタートして直ぐは静かな流れである。
本などで仕入れた情報によると、50cmの波高が数百メートルも続く瀬が有るとか、パチンコの瀬といわれる場所では的確なコース取りをしないと岩に引っ掛かりあえなく沈、等とあまり穏やかではなさそうだ。
直ぐにざら瀬が現れた。
そのような流れは朱太川で嫌と言うほど経験しているので、隠れ岩に捕まらないように注意深くパドリングする。だが、その注意もむなしく直ぐに岩に乗り上げてしまった。
その後も、何度も現れる同じようなざら瀬でことごとく岩に乗り上げ、そのたびにカヌーから下りてカヌーを岩から外す作業が続いた。
空は曇っていて、気温もそれほど高くは無かったが、湿度だけがやたら高く、川面からは霧が立ち上がっている。
眼鏡のレンズも曇るくらいの湿度の高さだ。
そんな状況の中で、何回もカヌーから下りての岩から外す作業はかなりしんどかった。
川の直ぐ近くまで山が迫り、落ち着いて見ることができたら素晴らしい景観なのだろうが、目先の隠れ岩だけが気になりそんな余裕も生まれてこない。
途中のかなり波が高くなっているような瀬では、隠れ岩に引っ掛かる心配もないので、逆に安心してパドリングすることができる。
昼の休憩で上陸して、ホッと一息付くことができた。
後半戦をスタートしても、相変わらず同じような感じだった。
そのうちに一緒にカヌーに乗っていた愛犬フウマがクーンクーンと変な声で鳴き始めた。
最初はどうしたんだろうと思ったが、どうやら何回もカヌーから降りたり乗ったりしているうちにカヌーの中が水浸しになってしまったので、岸に上陸したがっているみたいだ。
そうは言っても、皆で一緒に下っているので、我が家だけ離脱することもできない。
無視してそのまま漕ぎ続けたが、途中で岸に近づいた瞬間、とうとうカヌーから飛び出してしまった。
慌ててカヌーの向きを変えて岸に付けようとしたが、流れが急な場所だったので着岸に失敗、そのまま後ろ向きになって下流へと流され始めた。
それを見たフウマは置いて行かれると思ったのか、再び川に飛び込んで泳ぎ始めた。
しばらく、適当な上陸地点を探してそのまま一緒に川を下っていく。本人は必死なのかもしれないが、なかなか頼もしい泳ぎっぷりだと感心してしまう。
ようやくカヌーを岸に付けると、フウマもその後を追って上陸してきた。カヌーに乗せようとすると嫌がって逃げ出すので、無理やり捕まえてカヌーの中に放り込んだ。
もう一人前のカヌー犬になったと自負していたのだが、ちょっとこの先が心配になってしまった。
ようやく夫婦の息も合ってきて、隠れ岩に乗り上げる回数も減ってきた。
小さな落ち込みを上手くクリアして、余裕を持って上流から下ってくる他のカヌーを見物しているときに、キャンパーグループの1艇が危機に陥った。
私は、落ち込みの近くに先回りしていたクラブのメンバーが、流れの右側に寄るように早くから指示を出してくれていたので、その通りに進んで事なきを得たが、その艇は左側へ進んで行ってしまった。
キャンパーグループの中の唯一の子連れ艇である。
コースを変えようとしていたみたいだが、落ち込みの中央付近でとうとう岩に捕まり、そのまま上流側へ傾き岩に張り付いてしまった。
カヌーからこぼれ出る様に奥さんと子供が流し出され、そのまま落ち込みへと吸い込まれていく。小さな落ち込みなので、水流にのみ込まれることもなくそのまま下流へ流され、直ぐにクラブのメンバーにレスキューされた。
その後、岩に張り付いてしまったカヌーを回収しようとするが、水圧のために4、5人がかりでやっと岩から引き離せるような状況だ。
我が家のカヌーなら、ひとたまりもなく潰れていたかもしれない。
川の怖さと、ベテランと一緒に下る必要性を、今さらながら実感させられたのである。
最後に最大の難関、パチンコの瀬が待ち受けていた。
ただ、水量が少ないのでそれほど危険な場所は無いとの助言を受けて、二人で息を合わせて流れに向かっていく。
この辺ではもうかなりの余裕もできていて、今回の川下りの最後を楽しむように瀬の中を漕ぎ下った。
そうして上陸予定地点に到着した。
身体は疲れきっていたが、ようやく調子も出てきたところだったので、少しだけの物足りなさを残して今回の川下りが終了した。
ソロでは下ることができなかった空知川、ようやく今回、カヌークラブのメンバーのサポートにより下ることができて大満足の1日だったのである。
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