北海道キャンプ場見聞録
尻別川(2017/06/11)
雨にも負けずに川下り
クラブの主要メンバーが支湧別川へ遠征する中、私はkenjiさん企画の尻別川に参加することに。
私も最初は支湧別川の方に行くつもりが、倒木だらけで水量も多くカナディアンには厳しいと言うことだったので、尻別川に変更したのである。
でも、それが無かったとしても、支湧別川方面は日曜日も雨模様の予報だったので、比較的天気の良さそうな尻別川の方が魅力的だった。
雨でテンションの上がらないメンバー
しかし、札幌の自宅を出る頃から降り始めた雨は、途中から土砂降りに変わり、集合場所の京極の道の駅に着いてもまだ降り続けていた。
おまけに風も強く、バスから降りてきた観光客が傘を飛ばされそうになりながら歩いていた。
どう考えても、川を下るような天気ではない。
川下りが中止になり、このまま帰ることになったとしても何の不満もない。
それは、この川下りを企画したkenjiさんも同じだった。
集まってきたのは14名。
皆のテンションがこれ以上はないくらいにまで下がりきっているのは明らかだった。
直ぐに水を被るカヤックならば少々の雨くらい気にせずに下れるけれど、カナディアンではいくらドライスーツを着ているとは言っても雨で濡れるのは気分が良くない。
カヤックだけ下るという話も出たけれど、カナディアン組のH池・M木ペアのお二人は下りたそうな様子だ。
本格的に川下りを始めたばかりの二人は、多分今は川を下るのが楽しくてしょうがない時期なのだろう。
そんな二人を前にして、雨に濡れたくないから止めるなんて軟弱なことも言えず、結局は予定通り尻別川のラフトコースを下ることとなったのである。
スタート地点も流れが速い
カナディアンが5艇。
タンデムは私達とH池・M木ペア、りょう・かずえご夫婦の3艇、それにkenjiさんと姫さんのソロが2艇である。
カヤックは6艇で、その中でゲスト参加が2名。
そのうちの1名は元国体選手で、空知川の三段の瀬も漕ぎ上がるというから驚きである。
車の回送をしている間に雨もほぼ上がった。
昨日降っていた雨の影響で、川はかなり増水している。
この水量のラフトコースは過去に一度下ったことがあり、大増水というほどのレベルではない。
しかし、何時もは殆ど流れのないスタート地点なのに、今日は結構な流れとなっていた。
その流れに乗って、入口で大岩が待ち構える瀬まで下ってくる。
水が少なければ、大岩の先ではあちらこちらで岩が水面から頭を出しているのだが、今日は一面に白波が立っているだけで岩の姿は全く見えない。
大岩の先には一面の白波が立っている
もっと激しい瀬の写真を撮りたかった
それでも、この程度の水量では岩は完全に隠れてしまうことはなく、その後ろに小さなホールを作って待ち構えているのだ。
途中で止まって瀬を下っている皆の写真を撮ろうと思ったが、そんな余裕も無く、やっと川岸のエディに入れた時は既に大きな波は治まり、迫力不足の写真になってしまう。
元国体選手のS藤さんのパドリングは、さすがに素晴らしいものだった。
川を下るのは20年振りと言っていたけれど、そんなブランクは全く感じさせない。
クラブの中にも上手な人は沢山いるけれど、元国体選手の漕ぎは全く別次元のものである。
落差の大きな瀬まで下ってきた。
私達の前を漕いでいたS藤さんが、下るラインを手で示してくれる。
ここは、大きな波は立っているけれど素直な波なので、バランスさえ崩さなければ沈することはない。
ここでも皆の写真を撮るつもりだったが、大波の中から横に出るのを躊躇っているうちにどんどんと流されてしまう。
結局は、瀬をかなり過ぎた場所から小さな写真を撮るのが精一杯だった。
落差の大きな瀬、もっと近くから撮りたかった
晴れていればこの横に羊蹄山が見えるはず
流れが速く、瀬で遊ぶ人もいないので、良いペースで下っていく。
雨は止んでも低く垂れ込めた雲はそのままで、晴れていれば川の上から美しい姿を楽しめる羊蹄山も、今日は完全に雲の中だ。
まだ12時前だったけれど、尻別川の数少ない川原の一つに上陸して昼の休憩。
その川原も、もう少し水が増えれば水没してしまいそうだ。
再び下り始める時に雨が降り始めたが、直ぐに止んでくれた。
水が多いと、何時もは穏やかな流れの場所が結構な波の立つ瀬に変わっていて驚かされる。
その反対に、落ち込みになっている場所は潰れて落差も無くなっている。
ただ、荒々しい瀬であることに変わりは無く、ちょっと緊張させられる。
ここまで誰も沈していなかった。
増水した沙流川、岩だらけの鵡川をクリアしてきたH池・M木ペアは、増水した今日の尻別川でも全く危なげなく、そして楽しそうに下っている。
落ち込みは潰れていたが、その代わりに激しい波が
サーフィンできそうなウェーブがあったけれど・・・
そこにはカナディアンでも入れそうなウェーブができていたが、誰も遊ぶ人はいない。
私はちょっと入ってみたかったが、かみさんには全くその気がなく、諦めてそのまま下り続ける。
二股の瀬ではkenjiさんの指示により手前で上陸して下見をする。
増水して川岸は歩きづらく左岸側にも分流ができているので、瀬の近くまで行くことはできない。
しかし、遠くからでも瀬の真ん中に大きな波の立っているのが見える。
H池さん達もその様子を見てびびっていた。
でも、瀬の近くまで行けないのは逆に良かったかもしれない。
近くでその波を見れば、もっとびびっていたことは間違いない。
川を下っていて必ず下見をするような場所がある。
この二股の瀬もその一つであるが、私はここは下見しないで下った方が良いような気がする。
特に危険な場所がある訳ではなく、下見は恐怖心を増長するだけの効果しかないのだ。
一番最初に二股の瀬を下るS藤さん
ただ、そうすることによって、アトラクションの効果が高まるのは確かである。
ここを初めて下る人がいる場合は尚更である。
その緊張する姿を見て、周りの経験者は「自分達も最初はそうだった」と、優しさに満ちた表情で頷くのだ。
二股の瀬の下見で何時も繰り返されるお馴染みの風景である。
自分達が一番最初に下っても良かったけれど、もしもの場合もあるので、カヤックに先に行ってもらう。
ただ、今日の水量で沈すると、たとえカヤックが助けようとしてくれたとしても、そのままかなり流されてしまうことは間違いない。
まずはS藤さんが下っていく。
大波の横を余裕を持ってすり抜けていく。
次にmarioさん、ヨコさんが下った後に私達が続く。
今日は気持ちも盛り上がっていたので、最初から大波のど真ん中を抜けるつもりでいた。
その大波に辿り着くまでも結構な波が立っていて、カヌーが大きく上下に揺られる。
その中で必死になってカヌーの向きを調整しながら、大波に真正面から突っ込む。
思っていたよりもあっさりと抜けられた。
狙い通りに大波のど真ん中に突っ込む
エディへと入るこの瞬間が一番危なかった
その大波を越えれば、その後に続く波は可愛いものだ。
それよりも渦を巻くエディの方が怖かった。
たっぷりと水を汲んだ舟でその中に入ると、カヌーが大きく傾いて更に水が入ってくる。
やっとの思いで岸まで辿り着いた。
急いでカヌーの水抜きをして、撮影ポジションに着く。
ちょうどりょうさんご夫婦が下ってくるところだった。
豪快に波を越えていく。
次に下ってきたのがカヤックのH間さん。
こんな瀬ではやっぱり、大型カナディアンの方が迫力のある写真が撮れる。
りょうさんご夫婦
H間さん
そしていよいよH池さんペアのチャレンジ。
後で聞いた話しでは、私達が大波のど真ん中を下ったのを見て、そこがベストなコースだと判断したようだ。
それもあながち間違いではないが、無理しなくてももっと安全に下れるルートは有ったと思う。
最後まで頑張るM木さんと既に試合放棄のH池さん
大波に突っ込む時は真っ直ぐに入るのが肝心だが、H池さん達はそこでカヌーが少し斜めになってしまう。
それが影響したのか、波を越えた後でカヌーが傾く。
スターンのH池さんは、完全にパドルから手を離して舟のガンネルを掴んでいた。
一瞬、立て直した様にも見えたが、再びカヌーは傾き、二人はそのまま水の中へと消えていったのである。
バウのM木さんが必死にドローを入れている後ろで、しっかりとガンネルを掴んでいる様子が写真に記録されてしまったので、これは言い訳のしようが無さそうだ。
でも、誰だってこの状態ならガンネルを掴んでしまうし、ガンネルを掴んでリカバリーできることだってたまにはあるかもしれない。
心配していたとおり、沈した二人はエディに入る事ができずに、そのまま下流の瀬へと流されていく。
S藤さんが直ぐに駆けつけて、大きなカナディアンを小さなカヤックでグイグイと押していく。
素晴らしいボートレスキューだ。
それでもカナディアンのタンデムで沈するとレスキューも大変である。
M木さんは何とか右岸に上がれたようだけれど、H池さんは舟と一緒にもう少し流され、左岸に流れ着いた。
次の瀬まで流されていくH池・M木ペアを見送るしかできない
暫くレスキューの様子を見守っていたが、後ろを振り向くとマイキーさんが下ってきていたので、慌ててカメラを構える。
レスキューも大切だけれど、記録写真の撮影も大切だのである。
kenjiさんは期待を裏切って見事にチキンコースを下ってくれた。
姫さんは、他の誰よりも瀬のど真ん中をフワリと越えて、その後も右へ左へカヌーが傾きながら、ガンネルを掴むことなく漕ぎ抜けていった。
大波のど真ん中を越える姫さん
見事にチキンコースを下るkenjiさん
その後、左岸に流れ着いたH池さんは、次のエディまで一人でカヌーを漕ぎ、右岸に取り残されたM木さんはりょうさんご夫婦のカナディアンに乗ってH池さんの元まで送り届けられた。
ゴールを目指してのんびりと下っていく
さぞかし消耗しているだろうと思ってそこまで下っていくと、二人とも底抜けに楽しそうだった。
流されている間にシューズの片方を無くしてしまったM木さんなどは、まるでそのことが嬉しいかのように笑い転げている。
沈した後にこれだけ楽しそうにしている人を私は初めて見た気がする。
その後は激しかった瀬の余韻を楽しみながらのんびりと下っていく。
上空には青空も広がってきていた。
途中にある土壁も、緑に覆われていた。
かなりの雨が降っていたにも関わらず、その土壁から流れ出す湧き水の量は例年よりも少ない気がする。
今年の冬は羊蹄山に積もった雪が少なかったことが影響しているのかもしれない。
例年よりも湧き水の滝の量が少ない土壁
一時は下らずに帰ろうかとも思ったけれど、終わってみれば最高に楽しい川下りだった。
楽しい思いをするためには、ちょっとだけの努力と気合いが必要だということを、改めて分からせてくれた川下りでもあったのである。
(当日12:00尻別川水位 倶知安:167.75m)