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鵡川

(ラフトゴール地点〜福山大橋)

カヌークラブの10月例会初日は、鵡川のニニウから福山までを下る。
2日前の雨の影響で増水した鵡川の水位は、この日の朝になってもあまり下がらずに、福山観測所で168.89mになっていた。
この区間を下った中では4年前の168.75mが一番多く、その時の私の川下り日記を読み返すと、結構スリリングだったものの楽しく下っていたようである。

福山大橋から眺めた鵡川 今日はそれより14センチ多い。
たった14センチでも、それが上流の方では川の流れを一変させていることは想像に難くない。

それでも、ゴール地点の福山大橋から眺める川の様子はそれ程荒々しくは見えない。
N島先輩などは「ちょうど良い水量だ」と、とても嬉しそうな様子である。

スタートはラフトのゴール地点から。
そこから以前のスタート地点にしていた川原までは、特に荒々しい瀬もなく、すんなりと下っていけた。
逆に、水量が多い分、岩避けも少なくて楽に下れた気がする。

周りの山々の紅葉は、最盛期にはまだ少し早いのか、去年下った時の様な鮮やかさはない。
それでも、去年の紅葉は10年に一度と言われるくらいの美しさだっただけで、今年の紅葉も十分に美しいものだ。

ニニウホールで巻かれるタケさんしかし、その先にある小さな落ち込みは、普段とは全く違った表情に変わっていたのである。
OC-1のタケさんが、そこで波に巻かれて沈しているのが遠くから見えた。

どうなっているのかと思いながら近くまで下っていって、そこの波の大きさに度肝を抜かれる。
覚悟を決めてそのまま突っ込み、何とか無事にクリア。

そこが、フリースタイルカヤッカーに人気のニニウホールと呼ばれるスポットらしい。
よしひろさんが、何度もチャレンジするが、その度に沈して流されていた。
私達はそれを遠くから眺めているだけだ。


スタート地点   鵡川の紅葉の風景
ラフトのゴール地点から出艇   回りの山々は赤く色付いている

ニニウホール付近の紅葉
ニニウホールで遊ぶメンバーを遠くから眺めるだけ

鵡川の風景時折、雲の間から陽も射してきて、青空の面積も次第に広がってくる。
川の水も、増水している割には濁りも酷くはない。

ニニウホールで冷や汗をかかされたので、その先にはどんな激しい瀬が待ち構えているのかと、びくびくしながら下っていく。
よしひろさんが、ちょっとした瀬で横波を受けて沈した程度で、とりたてて書くほどの瀬も現れない。

美しい紅葉をもっと楽しみたいところだが、この先で待ち構えているバク転の瀬のことが気になって、それどころではない。
前方に紅葉した山の美しい姿が見えてきたが、その風景はバク転の瀬が近付いていることを思い出させた。


鵡川の風景
ビューポイントの大岩、この付近は流れも穏やかだ

「もしかしたら、増水して瀬が潰れているかもしれない。」
そんな淡い期待を抱きながら瀬に近づいていったが、やっぱり現実は甘くは無かった。
前を下っている人たちの姿が、瀬の中で一瞬消えてしまうのは、見ていてもあまり良い気はしない。

バク転の瀬を下る間近で見たバク点の瀬は、相変わらず複雑な波が立ち、その大きさも半端ではない。
逃げようとすると横波を受けるので、ど真ん中へと突っ込むしかない。

今日の舟は、今シーズンから乗り始めているME。
今朝、MEを車に積み込もうとした時、かみさんが「MEは嫌いだからフリーダムにしたい」と言い始めて、ちょっとした喧嘩になっていた。
喧嘩してでも、私の意見を通して持ってきたMEである。

フリーダムならば最初の大波に突っ込んだ時点で完全な水舟になっているはずである。
ところが、MEはニニウホールでも殆んど水を汲まなかったし、バク転の瀬でも最初の大波を水を汲まずに乗り越えた。
これは行けるかも。
鵡川のバク転の瀬後はバランスを崩さなければ良いだけだ。
ビデオカメラを構えているI山さんに手を振る余裕さえでてきた。

そうしてバク転の瀬をクリア。
結局ここでは誰も沈をせずに終わって、そのままここで昼の休憩となる。
バク転の瀬では、もっと水の少ない時に沈脱祭りとなった事もあり、瀬の難しさは水量や波の大きさだけで決まるものではないのだろう。

瀬の様子を近くまで見に行ったが、そんなに激しい瀬には見えない。
横から見るのと川の上から見るのでは全然印象が違っていた。


バク転の瀬を眺めながら昼の休憩
バク転の瀬を下り終えたところで昼の休憩

休憩を終えて再び下り始める。
この先はいよいよ鵡川の核心部である。

鮮やかな紅葉MEの対波性能に信頼がおけるようになっても、緊張感に変わりはない。
私は、緊張すると決まって喉がカラカラに渇くのだが、今日はスタートしてからずーっと乾きっぱなしである。

周りの山々が美しく色付いた風景も、緊張感を解いてくれるどころか、その先の核心部の様子を思い起こさせるだけだった。
「去年の5月にkenjiさんのカナディアンが張り付いたあそこの瀬はどうなっているのだろう」
今日は、下り始める前に「もしも沈したら、直ぐにカヌーを放して岸に向かって泳ぐように」とかみさんに話しをしてあった。
何せ、かみさんは今年の5月に沙流川で流されて指の骨を折り、私も8月に自転車で転んで指の骨を折ったばかり。
これ以上の怪我は絶対にしたくなかった。

鵡川核心部周りの水面が波立ち始めた。
そしてその波が次第に大きくなってきて、バク転の瀬のような大波へと姿を変える。
バク転の瀬は直ぐに終わったけれど、こちらの瀬は延々と続いている。
フリーダムだと途中で水舟となって、その段階で走行不能となっているだろう。
MEの有り難味を感じながら瀬を下っていく。

やがて、川は左へと曲がり、前方に崩れた崖が見えてきた。
障害物の岩が現れるようになる。
その岩を避けながら下らなければならないのに、思うようにカヌーを操作できない。
それは風のせいだった。
今日は最初から風が強かったけれど、ここに来てその風が急に強さを増してきたのである。
周りの地形も影響しているのだろう。

鵡川のV字谷を吹きぬけてきた風が真正面からまともに吹きつけてきた。
速い流れの瀬の中で必死になって漕いでいるのに、カヌーが前に進まない。
鵡川の核心部やっと、上陸できる小さな川原を見つけてカヌーを寄せようとするが、そのまま上流に押し流される有様である。

そうして核心部が始まった。
今よりももっと長い、岩だらけの瀬が延々と続くのである。
緊張感は更に増してくる。

しかし、その瀬がなかなか現れない。
岩の多い瀬が現れ、いよいよ始まったかと覚悟したが、その瀬も暫くすると緩やかな流れに変わった。
その後も時々瀬は現れるが、直ぐにまた穏やかな流れとなる。
気が付くと周りの風景が開けてきて、何時の間にか鵡川の核心部を通り過ぎていたようだ。

苦労して下っていた岩がらみの瀬は、増水によって潰れてしまい、逆に下りやすい瀬に姿を変え、その途中に瀞場のような穏やかな流れまで挟んでいたのである。
何はともあれ、一番心配していた部分をクリアしたことになり、これでようやく一息付くことができた。


鵡川の風景
核心部を抜けてやっと一息

ゴールは間近この後はゴール間近の瀬を残すだけなので、すっかりリラックスして下っていく。
ただ、心はリラックスできても、相変わらず風が強いので、漕ぐ方は全くリラックスできない。

特にカナディアン組は、疲労困ぱいである。
もしもこの風で大型カナディアンをソロで漕いでいたとしたら、途中で泣きだしていたかもしれない。

山間部を抜け、流れも緩やかになり、ゴールの福山大橋も見えてきた。
そこに突然現れるのが、ゴール間近の瀬である。
これがなかなか手強い瀬で、油断していると痛い目に合わされるのだ。

バク転の瀬を無事に下ったメンバーも、ここではカヤックが1艇、見事なバク転を披露。
私の前を下っていたOC-1のタケさんも、舟が真っ直ぐに立ち上がるような豪快な沈をしていた。
その様子を見て、私達はタケさんの下ったルートよりもやや左寄りから瀬の中に突入。
カヌーが引きずり込まれそうバランスを崩さずに最初の波を越えられた、と思った瞬間、カヌーは突然動きを止め、後ろに引きずられるそうになる。
「漕げ〜っ!」
大声でかみさんに指示を出すが、この時に撮影された動画を見た方から「ヒデさん、全然漕いでなかったしょ!」と言われてしまった。

結局、かみさんの頑張りでこのホールから抜け出すことができ、一度も沈をせずに過去最高水位の鵡川を下りきることができたのである。
自分で自分を褒めてやりたい。
久しぶりにそんな充実感を味わえた川下りであった。

2015年10月10日 晴れ時々曇り 
当日12:00鵡川水位(福山観測所) 168.86m 

鵡川の川下りダイジェスト版動画 


迫力のある鵡川の瀬   川下りを終えて
ゴール間近に一番の難所が   今回も楽しい川下りだった

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