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支湧別・湧別川

(名前の分からない橋〜新平和橋)

カヌークラブのミニ例会で、土曜日に支湧別川、日曜日にルベシベ川を下る話しがあった。
その週末は、かみさんが友人との温泉旅行、日曜日はサザンのコンサートの予定が入っていたので、支勇別川だけ私一人で参加する事にした。

ただ、一人でカナディアンを漕ぐのは、6年前の増水した鵡川(福山下流)以来である。
その時は、核心部の手前で瀬の下見をするはずだったのに、私一人が流れから抜け出す事ができずにそのまま核心部に突入。
結局沈して、そのまま激流の中を流されるという苦い思い出があるのだ。

スタート地点の様子鵡川と支湧別川では、川の大きさが全く違い、支湧別川の水もそれ程多くはないので、その時の様なことは無いだろう。
ただ、支勇別川は決して簡単に下れるレベルの川ではない。
果たしてそこを一人で漕げるのか、ちょっと、いや、かなり心配だった。

支湧別川にカヌーを浮かべる。
流れが速いので、そこからフェリーグライドで対岸へ渡るのも一苦労である。
二人で漕いでいる時ならば、どれくらいの流れまで対応できるか、大体の感覚で分かる。
しかし、長い間ソロで漕いでないので、その感覚が自分でも分からないのだ。

かなり下流に押し流されながらも、何とか対岸に渡って皆の準備が整うのを待つ。
今日の参加者は10名、10艇。
激流に翻弄されるカナディアンは、タケさんのOC-1だけだ。
倒木などがあっても突然には止まれないので、今日は皆の後ろから下っていく事にする。

スタートして直ぐに瀬が続く。
タンデムならば鼻歌交じりで下れるようなレベルの瀬でも、何せ6年ぶりである。
カヌーのコントロールさえままならない。

私は右漕ぎなので、タンデムで右にターンする時は、かみさんが右にクロスドローを入れ、私は後ろで軽くバックストローク気味に漕ぐだけ。
そんな安易な漕ぎ方が身に付いているので、ソロでもその感覚で体が動いてしまう。

ところが、急な流れの中ではその程度ではカヌーの向きは変わらない。
慌てて、思いっきり腕を伸ばしてドローストローク。
それも、力一杯漕がないと、目の前に迫ってきている岩にぶつかってしまう。

岩にぶつかりそう瀬の波はそれ程大きくは無いが、川幅が狭く岩も多いので、タイトな艇のコントロールが要求される。
それに、大型カナディアンで下っていて困るのは、エディが少ない事である。
それは、タンデムの時も同じだが、ソロだと余計に休める場所が無いのが辛い。

そのまま下っていくと先頭に出てしまうので、エディが無いところでも、何とかして止まらなければならない。
そんな時は、カヌーから飛び降りて岸に上がってカヌーを保持する。
そんな事を何度もやっているうちに、ガンネルに脛をぶつけたのか、下り終えてからドライスーツを脱ぐと、脛が擦り剥けて血が滲んでいた。

タケさんに衝突途中の瀬ではカヌーのコントロールを失い、エディの中で休んでいたタケさんの舟にまともに衝突してしまった。

下るのは大変でも、支湧別川の風景は本当に美しい。
特に新緑の美しい今の季節は、目に鮮やかな緑のトンネルの中をくぐり抜けるように下っていく。
これで天気が良ければ、最高の風景を楽しめたはずである

タンデムの時ならば、カヌー操作をかみさんに任せて、後ろで写真を撮ることもできるが、勿論そんな余裕も無い。
ひたすら漕ぎ下るだけである。


支湧別川の風景
新緑のトンネルの中を下る支湧別川

流れてきた枝を回収するパムさん川を半分以上塞いでいる倒木が現れ、ギリギリでその横を漕ぎぬける。
今回は6月例会の下見も兼ねていたので、I山さんが持参した鋸でその倒木を処理する。

でも、切り落とした枝をそのまま全部下流に流しているのが気になった。
それらの枝が下流の何処かでまた引っ掛かって、新たなストレーナーを形成する事だってあり得るのである。
それ程太い枝ではないので致命的な障害物にはならないだろうが、同じことを考えたらしいパムさんが、川の中に入って流れてくる枝の幾つかを回収してくれた。

高速道路が前方に見えてくると、その手前に直角に折れ曲がるような瀬がある。
そこを下見したついでに皆が下っている動画を撮影。
流れが岩壁にぶつかっている箇所以外は特に難しい瀬では無く、あまり迫力ある映像は撮れず。


直角の瀬   直角の瀬を下るコージさん
左岸の岩にぶつかりそうになる   瀬を下るコージさん

支湧別川は、その辺りから旧白滝村の市街地近くを流れるようになるのだが、川の様相は逆に険しさを増してくる。
去年の例会で下った時、この辺りで倒木が川が完全に塞ぎ、ポーテージしなければならないところが一箇所あった。
支湧別川の厳しい流れその時は二人がかりのポーテージでも苦労していたのだが、幸いなことに倒木は無くなっていた。
ただ、倒木が無くてもその辺りは激しい瀬になっていて、波を被ってカヌーの中に水が入ってくる。

他にも幾つかの瀬で、波をまともに被るところがあった。
もしもそこをタンデムで下っていたら、カヌーはもっと多量の水を汲んでいただろう。
こんな時は、ソロの方が下りやすい。

それに、タンデムの時よりソロで下っている方が、カヌーは安定しているような気がする。
嫌らしい流れの落ち込みでも、不安を感じずに下ることができた。

そうは言っても、パドリングではタンデムの時より倍以上疲れるのは確かである。
小さな川原で昼の休憩をとる事になった時は本当にホッとした。


支湧別川の風景
風景はとても美しい川なのだが

昼の休憩
小さな河原で休憩

狭い落ち込みその先の市街地に入った辺りで、渇水時はポーテージを強いられる岩場がある。
今回は水が多かったので、左岸側から下る事ができた。

そしてその先で、湧別川本流と合流する。
本流と言っても、水量は支湧別川の方が多いくらいだ。
この合流部付近は切り立った岩壁に囲まれ、なかなか美しい場所である。

合流後は川幅も広がり、ようやく余裕を持って下る事ができるようになった。
国道に架かる幽仙橋を過ぎると、その先で堰堤のポーテージが待っている。
湧別川との合流部付近今までは、一旦川原に上陸してからポーテージできたのに、その川原が無くなってしまっていた。
ポーテージする場所の川岸は少し小高くなっていて、流れの中からそこに直接上陸しなければならない。
皆で協力し合いながら、1艇ずつ岸に引き揚げる。

その後は砂利道を150m程カヌーを運ばなければならない。
一人では絶対に無理だと思って、タイヤの付いたカートをカヌーに積んであったので、それに私とタケさんのカナディアンを乗せて運ぶ。
ポーテージの際にこのカートを使ったのは初めてだったが、なかなか優れものである。
尻別川や忠別川での堰堤越えの長距離ポーテージには、もっと力を発揮してくれそうだ。

湧別川本流堰堤の下流は再び岩場が多くなり、激しい流れとなる。
支湧別川よりも川幅はいくらか広がっているが、瀬の波の高さは支湧別川以上である。
カヌーの水出しに忙しくなる。

そして一番の難所、クランクの瀬が待ち受けていた。
まずは全員で下見をする。
そしてG藤さんを筆頭にして、一人ずつ下っていく。
撮影はI山さんに任せて、私もカヌーまで戻る。

私とK岡さんの二人が最後に残り、K岡さんが先に下り始める。
クランクの瀬に入るまでの間も、結構激しい流れになっている。
なんとK岡さんは、そこで沈脱してしまった。

K岡さんと一緒に川を下っていて、同じようなシーンを何度目にした事だろう。
またしても、瀬の中でもみくちゃになりながら流れていく、哀愁漂うK岡さんの姿を見せられる事になるのだ。
クランクの瀬を下見するK岡さんしかし、残念ながら私の場所からは、肝心のそのシーンが見られない。
複雑な気持ちのままK岡さんの様子を見守っていると、人間は何とか岸に上がって、カヤックだけが流されていってしまった。
これならば大事にいたらなくて済みそうだ。

上流に一人取り残された私は、下流の様子が全く分からない。
もう一度歩いて見に行くのも面倒で、K岡さんのカヤックが流れていってから時間も経っていたので、そのまま下っていく事にした。

ところが、瀬の手前まで下っていっても、カメラマンのI山さんは全然別の方を向いたままだった。
「レスキュー作業がまだ進行中なのだろうか?」
写真は諦めて下っていくしかない。

ギリギリでクランクの瀬をクリアそこから流れは一気に速くなり、そのまま岩壁にぶつかって左へと向きを変える。
そこを上手く下らないと、右側のエディに掴まってしまう事になる。

そのエディにはmarioさんと228君の姿があった。
一瞬「えっ!何で?」と思ったが、それにかまっている余裕は無い。
結局、本流の速い流れから抜け出せず、横向きになったまま岩壁に衝突してしまう。

でも、何度か下ったことがあり、慌てなければそのまま通過できる事は分かっていた。
ちょっと格好は悪かったけれど、無事にクランクの瀬をクリア。


沈するK岡さん   カヤックを回収する228君
またしても核心部の前で沈脱   流れ着いたカヤックを回収する228君

無事に持ち主のところに届けられたカヤックホッとしていると、向かいの崖の上からロープを使ってK岡さんのカヤックが下ろされてきた。
そのカヤックは、今度はG藤さんの投げたロープに結ばれて、K岡さんのいるこちら側の岸に届けられた。

後で確認したところ、228さんが先に沈してエディに巻き込まれた所へ、K岡さんのカヤックが流れ着いたらしい。
そこへクライマーのmarioさんが、下流側の崖から登っていって、ロープを使ってカヤックを回収したのである。
普通の人じゃ登れないような崖なので、marioさんがいなかったら、カヤックの回収にはかなり難儀していたかもしれない。

そんな事もあり、既に時間は午後2時半を過ぎていた。
ここまで3時間かかって、しかも、下った距離はまだ全区間の半分程度である。
ここから先はゴールを目指してひたすら漕ぎ続ける事となる。

景色も見ずにひたすら漕ぎ続けるところが、瀬はまだまだ続いていた。
続くどころか、これまで以上に波の高い瀬なのである。
水舟になっても、皆はどんどん下っていってしまうので、ベイラーで水を汲み出しながら漕ぎ続けるしかない。

こんな時も、1馬力よりも2馬力で漕ぐ方が絶対に楽である。
途中から霧雨も降り始めた。
激しい瀬も無くなり、岩肌が剥き出しとなった迫力のある風景も広がってくるが、霧雨の中ではカメラを向ける気にもならない。

今日は、川を下った後は、上川町の学校跡を利用した宿泊施設に泊まる予定になっていた。
私も一緒に泊まって明日の朝に帰るつもりでいたけれど、既に疲労困ぱいで、これでは明日のサザンのコンサートまでに体力が回復しないかもしれない。
さっさと家に帰って休んだ方が良さそうである。

最後は修行のような川下りとなって、午後3時半にようやくゴールの川原へとたどり着いた。
この時の気温は5度。
気温は2度最初の計画ではこの日は野宿することになっていたのだが、前日になってO橋さんが急遽宿泊施設を予約したのである。
霧雨も降っていて、そこを予約していなければ、ここで解散という事態になっていたかもしれない。

皆と別れて、私だけ札幌へと戻る。
途中の白滝の道の駅にある温度計は2度になっていた。
サザンの最新アルバム「葡萄」を大音量で流しながら車を走らせていると、川下りの疲れも何時の間にか忘れてしまい、気持ちは既にサザンのコンサートへと向いていたのである。

2015年6月6日 晴れのち曇りのち霧雨 
※参考 当日12:00湧別川水位(湧別川観測所) 173.81m 


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