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当別川

(西野沢川下流の橋〜開運橋)

今の季節の川下りは山菜採りとワンセットと言うのが、最近の我がカヌークラブの傾向である。
26日に下った千歳川でネギを収穫したばかりなのに、「29日は鵡川上流部でネギを採りましょう」、「GWは歴舟川でネギが沢山採れるそうです」と、ネギ採りミニ例会企画が次々に打ち出される。
私も、その企画に乗るつもりだったが、雪解けの増水で鵡川の水位は2年前に下って酷い目に遭ったときより更に増えていたのである。
2年前は核心部の瀬をガンネルまで水没しながらも何とか下りきれたが、そこを沈せずにもう一度下る自信は全く無かった。
そもそも、ネギを採るために命を張る気は更々無い。

鵡川企画への参加は諦めたが、せっかくの天気の良い休日に何もしないのは勿体無い。
2年前に下った当別川ならば増水しても何とか下れるし、ネギも確実に採れる。
川下り前に花を楽しむ私と同じく鵡川への参加を躊躇っていたkenjiさんに連絡すると、直ぐに当別川企画に飛びついてきた。その後、marioさんからもメールが来て、前日の夜になって当別川ミニミニ例会企画がまとまったのである。

2年前に当別川を下った時は、当別町の郊外にはまだ雪が残り、当別ダムのダム湖もまだ氷が張ったままだった。
それが今年は雪解けが早く、もしかしたらと思って立ち寄った弁華別神社の境内では、エゾエンゴサクがちょうど見ごろを迎えていた。
ここの神社のエゾエンゴサクがとても綺麗なことに気が付いたのは、もうかなり昔になるけれど、その頃よりは群落の面積が小さくなったような気がする。

集合場所にしていた道民の森青山中央地区案内所には、既にkenjiさんご夫婦とmarioさんが到着していた。
スタート地点の橋marioさんの車をゴール地点の開運橋に置いて、そのままスタート地点へと向かう。

2年前の時は、そこは完全に雪の中。
道路際の駐車スペースから、カナディアンをソリのように引っ張って川へと下りたものである。
今回は完全に雪も無くなり、そこに架かっている橋も車で通れそうな状態だった。
しかし、欄干も無く、今にも崩れ落ちそうなこの橋の上を、車で渡る気には絶対になれない。

橋の上流側がちょうど良い出艇場所になるが、倒木が絡んでいたので、下流側からカヌーを出す。
流れが速いので、岸から離れたらそのまま一気に下っていかなければならない。


スタート地点の様子   スタート地点の様子
この先に橋が架かっている   一部に雪が残るだけ

最初のエディで一息付いていると、marioさんが早くも「この辺ってネギ有りそうじゃないですか」と言い始めた。
勿論、私もkenjiさん達も川下りよりネギを目的にしているのは確かである。
でも、まだ1キロも下っていない。
ネギを探すmarioさんここで上陸して、ネギ探しをしていたら、ゴール地点までたどり着く頃には暗くなってしまいそうだ。
marioさんを促して、先へと下る。

土壁があると、ネギが生えていないか、目を皿のようにして探査する。
当別川は化石も結構採れるらしく、如何にも化石が入っていそうなノジュールが土壁の中から顔を出している。
でも、今回は化石よりもネギである。

川岸に本格的な山菜装備をした二人連れが立っていた。
背中に大きな籠を背負って、如何にもプロの山菜ハンター風である。
でも、こちらはカヌーと言う強力な武器があるので、彼らが行けない場所にも行けてしまうのだ。


ネギを探しながら当別川を下る
ネギが気になって斜面ばかり見ている

上陸したがネギは無し流れが速くてカヌーはどんどん進んでいく。
如何にもネギの生えていそうな場所を見つけたので、今度は上陸して探索することにした。
しかし、残念ながらそこにネギの影は無し。

途中で見かけた、籠を背負った山菜ハンターが、何時の間にか近くを歩いていた。
先ほどは川の反対側の岸にいたのに、途中にあった吊橋を伝ってこちら岸に渡ってきたらしい。
こうなるとやっぱり、絶対にカヌーでしか行けない例の場所に向かうしかなかった。

増水した川は、所々で大きな波が立っていた。
でも、川幅も広がっているので、そんな場所は避けながら下ることができる。
カナディアンでもサーフィンが楽しめそうな大きなウェーブもあったけれど、今回はそんなところで遊んでいる暇は無い。

川を塞ぐ倒木倒木も多い。
上流から眺めた様子から問題無しと判断して通過した倒木も、実は川を横断するように倒れていた倒木だったりした。
もう少し水位が下がると、その倒木は危険なストレーナーに変わりそうだ。

他にも同じような倒木があり、比較的簡単に下れる当別川とは言っても、侮ることはできないのである。

そして、2年前にネギを採った場所に上陸。
雪が多かった2年前は、ここの斜面だけが全層雪崩の後で土が出ていて、そこにネギが生えていたのである。

「今年は雪解けも早いので、その斜面全部がネギ畑になっているかもしれない。」
そんな期待をしていたのだが、さすがにここだけはまだ雪が残っていて、土が出ているのは斜面の上の方だけだ。
今回もやっぱり、苦労してそこまで登らなければならない。
でも、それは想定済み。


当別川のネギ斜面
この斜面の上にネギの群落があるのだ

私達やkenjiの姫さんは軽アイゼンを用意していたし、marioさんは登山用のハンマーを持ってきてそれをピッケル代わりに使うらしい。
そして、marioさんが先に登って、斜面の上からロープを出しくれる。
そのロープが川用のレスキューロープと言うのも面白い。
山菜ナイフもリバーナイフで代用し、カヌーに登山、山菜狩りと一体何をしに来ているのか、自分でも良く分からない。

ネギを求めて急斜面を登る3人marioさんを先頭に、kenjiの姫さん、かみさんの3人がさっさと登っていく。
周辺にはエゾノリュウキンカや水芭蕉が綺麗に咲いていたので、私は花より団子ならぬ、ネギより花で、まずはそちらの写真撮影。
それからおもむろに登り始める。
kenjiさんは最初から登る気は無く、ネギ採りは姫さんに任せるつもりらしい。

最初の雪の残る斜面は軽アイゼンを利かせて登っていく。
斜度は30度以上、足を滑らせればそのまま滑落である。
雪がなくなると今度は泥の斜面。
斜度は更にきつくなり40度以上はありそうだ。
ネギが生えているのはそこを登った先である。


エゾノリュウキンカとミズバショウ   登る気のないkenjiさん
急斜面の下ではミズバショウが咲いていた   全く登る気のなさそうなkenjiさん

先に登っていた3人は収穫に余念が無い。
私もそこまで登ろうとするが、泥で滑りやすい急斜面に悪戦苦闘。
地表に出ている木の根を手がかりにして登るが、枯れた根を掴むとそれがボキッと折れて、危うく滑落しそうになる。
ネギを採るために命を張る気は更々無いと言っていたくせに、既に命がけである。

途中で後ろを振り返ると、眼下には満々と水を湛えた当別川が流れ、その上流にはピンネシリや神居尻岳の白い姿が青空の中に浮かんでいた。
素晴らしい眺めだけれど、それを楽しんでいる余裕も無い。


斜面尾上からの眺め
斜面の上から眺めると、遠くに神居尻山やピンネシリが見える

ドライスーツの中を汗が流れ落ちる。
気温が20度近くまで上がっている中でドライスーツを着たまま、こんな急斜面を登っていれば、汗が噴き出すのも当然である。

やっとネギの生えているところまでたどり着いて、収穫を始める。
ネギをナイフで切り取るためには両手をフリーにしなければならない。
斜面に座り込めば少しは安定しそうだが、ドライスーツを泥だらけにはしたくない。
時々足がズルッと滑り、その度に滑落の恐怖におびえる。

ネギ収穫中のかみさんネギは何故か、自分の足元に生えているものより、斜面の上部に生えているものの方が太くて美味しそうに見えるものである。
浅ましい人間はそれを追い求めるあまり、最後には滑落して翌日の新聞紙上に「山菜を採りに山に入った男性(59才)が滑落死」と載ることになるのである。
そうなる前に「山菜に命を掛けるものではない」と自分を戒め、下山を決意した。

ネギの収穫量は姫さんが圧倒的だった。
変形膝関節症のため運動することを止められている身にも拘らず、「これは運動ではなく仕事だ」との意味不明の理屈を言って、急斜面を駆け上っていく。
かみさんがスコップで畑を耕す様子を、私は「人間トラクターみたいだ」と言って笑うが、姫さんがネギを収穫する様子はまるで人間コンバインである。

そこでそのまま昼食にして、再び下り始める。
ネギは十分に収穫した筈なのに、相変わらず川岸の土手ばかり見ながら下っていく。
たまに、小さな群落はあるものの、皆で上陸して採るような対象ではない。


当別川を下る  
相変わらずネギが気になる   こんな場所はのんびり下る

林の中のフキノトウ畑marioさんは、来年のために新しいネギ畑を開拓したいみたいだ。
何となくネギが生えていそうな場所を見つけて上陸。
しかし、そこにもネギは無し。
その代わりに林の中にはフキノトウが沢山出ていて、初夏には立派な蕗畑に変わりそうだ。

コゴミも枯れ草の中から顔を出し始めていた。
こちらは後一週間もすれば採り頃になりそうである。

この付近ならば何処でもネギが取れそうな感じだが、結局、大群落は私達が採った場所しか見つけられなかった。

当別川の瀬道道の青山奥橋下流の堰堤は、それほど苦労せずに越えることができた。
そこからゴールの開運橋までは、結構な瀬が続き、緊張させられる。
川全体が瀬になっているので、逃げ場所が無いのだ。
それでも、鵡川の核心部の瀬を下ることを思えば楽勝である。

途中の森の中にアズマイチゲの大群落が見えたけれど、上陸できる場所が無くてそのまま通り過ぎるしかなかった。
そこは無理してでも上陸して写真を採りたかったところだ。
それだけが心残りだったけれど、ネギも十分に取れて、素晴らしい青空の下で、スリリングな川下りも楽しめ、楽しい休日を過ごすことができたのである。

2015年4月29日 曇り 
当日12:00当別川水位(川下観測所) 2.95m 
※ダム下流の観測所なので参考数値程度 


堰堤越え   到着
堰堤を直接越えられそうなのはここだけ   開運橋上流左岸に上陸

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