全体に流れが速いので、気がつくと既にゴルジュ地帯の出口近くまで下ってきていた。
水の少ない時は、この先のゴルジュの出口の瀬が唯一の緊張させられる場所になっている。
今日のこの水量でそこがどんな状況になっているのかは誰にも分からない。
途中で止まれる場所が無いかもしれないので、かなり手前から間隔を開けて1艇ずつ下っていくことにする。
岩壁の間をS字状に川が流れているので、その先の様子が全く分からない。
先にカヤック組3艇が下り、その後でカナディアン組4艇が下る。
我が家が一番最後。
他のカヌーの姿が全て見えなくなったところで、おもむろに下り始める。
やがてゴルジュ出口の瀬が見えてきたが、邪魔な岩が水面下に沈み、何時もより下りやすそうに見える。
途中のエディでI山さんがカメラを構えていた。
慎重にルートを見極めながら下っていくと、下流の左岸にS吉さん夫婦が上陸しているのが見えた。
目の前に現れた落ち込みの下は全体が真っ白になっていた。
そのホールに捉まらないようにパドルに力を込めて漕ぎ抜ける。
そんな場所を2、3ヶ所過ぎた先で、ゾッとするような巨大な波が待ち構えていた。
こうなったら覚悟を決めてそのど真ん中に突っ込むしかない。
カヌーが何度も跳ね上げられる。
「楽し〜ぃ!」
暴れ馬を乗りこなしているような快感に、思わず歓声を上げてしまった。
そうしてゴルジュ地帯を抜けて流れは穏やかになる。
出口の岩の上に立っていたF本さんから、Y谷さんのカヤックが流されたと聞く。
その先ではkenjiさん夫婦が水没したカナディアンを引きずって川の中を歩いていた。
そうして私達も岸に上陸。
I田さんのカナディアンにY谷さんが乗り込み、流されたカヤックを探しに行くところだったので、予備のシングルパドルをY谷さんに貸す。
S吉さんが下ってきて「ガンネルが折れちゃった」とのこと。
ガンネルとはカナディアンカヌーの縁の部分を補強している部材で、落ち込みの下の岩にぶつかった時にカヌーが捻れて、その力で木製のガンネルが折れたようだ。
結局ゴルジュ出口の瀬では、Y谷さんとF本さんのカヤックがホールに引きずり込まれて沈脱、そしてカヤック1艇流出、kenjiさんのカナディアンは水沈、S吉さんのカナディアンがガンネル破損と散々な結果となったのである。
カヌーの水を抜いて、Y谷さん達の後を追いかける。
ゴルジュの中ならばエディが沢山あるので、途中でカヤックが引っかかる確率は高いけれど、ゴルジュを抜けた先はエディがそんなに有るわけでもない。
一体何処まで追いかけることになるのだろうと心配しながら下っていくと、そこから直ぐ先でカヤックメンバーが上陸していた。
意外と簡単に発見できたらしい。
聞くところによると、ひっくり返っていたカヤックは自分でロールで起き上がり、小さな岩の後ろのエディに回り込んで上流を向いた状態でご主人がやって来るのを待っていたそうである。
随分と躾のいきとどいたカヤックだと皆から褒められていた。
そこで小休止して体制を整え、再び下り始める。
波の大きな瀬が次から次へと現れるが、ゴルジュの出口の瀬と比べたらどれも可愛いものである。
F本さんは手頃なウェーブを見つける度にそこで遊び始める。
皆も良く分かっているので、少しは待っているけれど、それが長くなると見捨てて先に下り始める。
もうすっかり何時もののんびりとした川下りに戻っていた。
途中の河原で休憩していると地元の人らしいカヤックが2艇下ってきた。
そこにちょうど良いウェーブが有るので、カヤックメンバーは皆で遊んでいる。
休憩中にロープ投げの練習をやろうということになり、皆で投げ合ったが、驚くくらいに下手くそな人ばかりでがっかりしてしまう。
最近のクラブの例会では参加者も固定されてきて、レスキュー体制をとりながら下るというシチュエーションは殆ど無くなってしまった気がする。
沈しても他のカヌーにつかまらせるなどして岸へ上げることが殆どで、ロープを投げるような機会は無いに等しい。
そんな事もあって、来週にはクラブとして本格的なレスキュー講習会をすることになっているが、休憩中のロープ投げ練習も恒例にした方が良いかもしれない。
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