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石狩川

(菊水橋〜中愛別橋下流)

 カヌークラブの6月例会二日目は石狩川。
 下る区間は、上川層雲峡IC出口近くの菊水橋から中愛別橋下流の愛別オートキャンプ場対岸まで。
 前日から愛別オートキャンプ場に泊まっていたけれど、朝からぽつぽつと降っていた雨が次第に本格的な降りに変わってきて、気持ちが次第に萎えてくる。
 集合場所の上川層雲峡IC出口の駐車場に集まってからも、雨は降り止む気配が無い。
 雨を避けながらトイレの前で皆で着替えをしていると、一般のお客さんが不思議そうな表情を浮かべて私達を見ていく。
 「こんな雨の日に、この人たちは一体、何をする気なのかしら?」
 3週間前に役員が下見でここを下った時は、雪解け水でかなり増水していて、その状態のままでは例会は無理だと考えていたらしい。
 時間が経てば水位も下がるだろうと考えていたものの、結局この日の水位は下見のときから20cmちょっとしか下がっていなかった。
 気温も低くて、誰かが「川下るの止めて、温泉に入って、何処かで美味しいものを食べて、帰りたいな〜」と呟いた。
 皆、心の中ではその意見に賛成していたものの、例会の日程を間違え一週間前にここまで一人でやって来て、それにも懲りずに、再び今朝一人で札幌からやってきたS村さんのためにも、中止にするとは誰も口には出せなかったのである。
 前日は一人で漕いだ会長も、今日は奥さんとのタンデム。それにkenjiさん夫妻も新たに加わり、今日はカナディアンが3艇もいるのは心強い。
 トイレの前で簡単なミーティング。
 注意事項はもっぱら、沈して流された時の対応の仕方だ。増水して川の流れが速く、エディも無くなっているので、一度流されると相当な距離を泳ぐことは覚悟しなければならない。
 特に大型カナディアンについては、「沈したら直ぐに、ひっくり返ったカヌーを元に戻してください」と注意を受ける。
 確かに水の中で裏返しになったカナディアンは、速い流れの中ではどうしようもできない。心配なのは、川を流されながら、果たしてカヌーを元に戻せるかどうかだ。
 「ガンネルを持ち上げても駄目だったら、一度カヌーの中に潜って、下流側のガンネルを下に引っ張ってください。」と会長から説明されるが、会長を含めて実際に川の中でそんなことをした経験がある人は誰もいないのである。

スタート前の集合写真 そのままスタート地点の菊水橋の下へ移動。
 今日は地元旭川カヌークラブからの3名を加えて、総勢22人での川下りである。
 昨日と同じく、留まっていられるエディが無いので、一旦川に出たら直ぐにそのまま下り始めなければならない。
 橋の橋脚上流から順々にスタートするカヌーを見送っていると、先に下り始めたはずのI田元会長がずぶ濡れになって、橋脚下流側からカヌーを引きずりながら現れた。
 さすがI田元会長である。
 何処で沈するか全く予想ができないので、私達夫婦の間では「I田元会長の直ぐ後には絶対に近づかないこと」が暗黙の了解事項となっているのだ。
 本人は「最短沈記録だ!」と喜んでいたけれど、上には上の記録がある。
 3年前の、同じ様に増水した余市川での例会。緊張しながら川へ出る準備をしていたら、その目の前を当日のツアーリーダーだったI山さんが流されていき、皆で唖然としたことがあったが、多分その記録は永遠に破られることは無いだろう。


早くも沈   この区間で沈
本日の沈1号   それにしても、どうしてここで・・・?

 増水して川幅一杯に広がり流れる石狩川。川原は全て水没して、何処にも見えない。
 昨日の湧別川とは全然違う、大河のパワーが感じられる。
 波の高さもこちらの方が大きい。
大波の中を漕ぐ ただ、波と波の間隔が長いせいか、カヌーは大きく上下に振られるが、その中に水はあまり入ってこない。
 昨日の支湧別川の方が、瀬を越える度に、水出ししなければ下り続けられないような水が入ってきていた。
 そんな大波の立つ場所はなるべく避けようとするのだけれど、川のそこら中に大波が立っているので、どうしても突っ込んでしまう。
 Kenjiさん夫婦の乗るカナディアンは、我が家の舟よりも喫水が低く、ホワイトウォーターにはあまり向いてないカヌーなのだけれど、大波の中を果敢に下り続けている。
 我が家は大波を避けているけれど、Kenjiさん夫婦の艇は敢えてそこに挑むかのように、波の一番高い場所へと吸い寄せられていく。
 それでも沈しないのは、見事なバランス感覚と言えるだろう。
 (瀬の中の動画 大18.3MB 小3.2MB


大波の中を下る   頭から波をかぶる
大波が逆巻く   水しぶきで前が見えない!

 やがて今回の最大の難所である、ポンモシリの瀬が目の前に現れた。
 そのまま下っていって瀬に突っ込んでしまっては大変なので、一旦手前の中州に上陸して、そこからフェリーグライドで左岸へと渡った。
瀬をスカウティング そして川の中を歩いて、近くで瀬の様子を窺う。
 増水したポンモシリの瀬は相当な迫力である。
 ヒーローコースは右岸側、左岸寄りにチキンルートもあるけれど、岩がらみでゴツゴツした感じだ。
 ここをフィールドとしている旭川CCの人達が颯爽とヒーローコースを下っていく。
 チラッと、そちらを下ってみたい気持ちが湧いてきたけれど、その先も流れが速くて、沈したら何処まで流されるかも分からず、頭を振ってそんな妄想を追い払い、目の前の現実に対処することにした。
 チキンルートと言っても、通常の川下りの時ならば、緊張を強いられるような落ち込みである。
 でも、昨日と今日のこれまでに、岩がらみの瀬や大波の中を散々に下ってきているので、何のためらいも無く下ることができる。
 それに、ヒーローコースと比べたら、これぞまさしくチキンルートと言った感じで、下り終えても満足感は全く得られなかった。


チキンルート   チキンルートを下る
これでもチキンルート   それなりの迫力はあるけど・・・

 チキンルートを全員無事に下り終えて、ヒーローコースにチャレンジする人たちを羨ましく眺めていたら、N山妻さんが最初の波で沈、真っ白な波に揉まれながら何度もロールで起き上がろうとするものの、とうとう沈脱してしまった。
 体は何とか岸まで上がれたけれど、途中でカヤックを放してしまって、舟だけが下流へ流されていく。
 直ぐに他のカヤックが、流される舟に体当たりしながら岸に寄せて、何とか徒歩圏内で回収に成功した。
 これがカナディアンだったら、小さなカヤックで押し付けてもビクともせずに相当距離を流されることになり、やっぱり無謀なチャレンジをしなくて良かったと胸をなでおろした。


ヒーローコース
ヒーローコースも下りたかった・・・

 大きな波の立つ瀬が次々に現れる。
 乗っている自分達は分からないけれど、横から見ているとカヌーが45度の角度で空を向いているとのことである。
流されるK藤さん 慣れてくると、ロデオで暴れ馬に乗っているような気分で、とっても楽しい。
 下流に瀞場があれば、もっと楽しい気分になれるのに、沈だけは絶対に避けなければならず、楽しさと緊張の入り混じった複雑な感情で瀬を下ることになる。
 直ぐ隣りでK藤さんが沈。
 そのまま瀬の中を流され、波に揉まれる間にカヤックを放してしまい、またしても人間と舟が離れ離れになってしまった。
 舟だけがかなり流されたけれど、今度も徒歩圏内で無事に回収できた。

 そのK藤さんが、しばらく下ってから再び沈。
 今度こそは舟と人間を離れ離れにさせてはならじと、6、7艇のカヤックが一斉に周りを取り囲む。
 たとえパドル1本たりとも、その輪の中から外へは出させないといった様子で、何とも心強いレスキューの図ではある。
完全包囲? その下流に適当な川原が有り、K藤さんの消耗も激しいようなので、そこで初めての休憩となった。
 相変わらず雨は降り続き、のんびりと食事もできない。
 皆、立ったままでおにぎりやパンを食べている。
 ドライスーツを着ているので、雨が降っていても川下りに何の支障も無いけれど、こんな時だけは雨が疎ましい。
 気温も低く、ジッとしていると体が冷えてしまいそうなので、川下りを再開した。

 次に待っていたのは巨大な堰堤越え。
 ここの左岸を下ってしまうと確実に死ぬことになるので、緩やかな流れの中でも慎重に右岸寄りに進む。
 カヌーを引きずって、かなりな距離を歩かされるものと覚悟していたが、5m程度の堰堤を直接カヌーを下ろすことができたので、前日の支湧別川での堰堤越えのような苦労はせずに済んだ。
 それにしても増水した石狩川の堰堤は、ものすごい迫力である。
 堰堤を滑り降りた時にドライスーツのお尻を汚してしまった人は、ここでお尻を洗うのが決まりごとらしい。
 滝のように流れ落ちる水に、皆でお尻を突き出している姿はとても微笑ましいものがある。


巨大堰堤   尻洗い?
堰堤は右岸からポーテージ   お尻洗い?

 分流も何箇所かあった。
 流れが3方に分かれている場所もあったりして、増水した石狩川の分流はどれも他の川の本流並みの流れなので、どちらに下るか大いに迷ってしまう。
 今回は旭川CCのメンバーが参加してくれているので、安心してその後から付いていくだけで良いので助かった。

危険な堰堤 二つ目の堰堤は左岸をポーテージ。
 この堰堤は落差も小さく、一つ目の堰堤と比べて迫力は無いけれど、その下は横一列のホールになっていて、もっとも危険な場所である。
 近くまで寄ることも避けて、かなり上流側に上陸して、草を掻き分けながらカヌーを引っ張る。
 この堰堤は右岸側に通り抜けられる場所があり、自身のある人はそこから下り降りた。
 多分、全員がそこを下っても問題は無かっただろうけれど、安全第一なのでしょうがないところだ。

 雨の降りも次第に強くなってきて、メガネをかけていると前が見づらくてしょうがない。
 早くゴールにたどり着きたくなってきた。
 しかし、そのゴールの直前に難所が待ち構えているはずだ。
 最初に全員でゴール地点の確認をしたのだけれど、そこの上流に白波の立っている場所が見えた。
 かなり離れた場所からでもそれだけ白く見えているということは、近くに寄れば相当な瀬であることは確実である。
もしもそこで沈でもしたら、早い流れにのって一気に流されることになる。
 多分、レスキューロープも届かないので、なすすべも無くゴール地点を通り過ぎて、その後何処まで流れていくかは運次第だろう。

 前方にまた瀬が見えてきた。白波の続く先には、巨大なウェーブが立っている。手前の瀬は無事に下れたとしても、それに続くウェーブの中に突っ込むことだけは、絶対に避けたいところだ。
予定したルート 白波の瀬は右岸側の方が波が高そうなので、左岸寄りを下ることにした。しかし、右岸側の高波はそのまま左にカーブして巨大ウェーブへと繋がっているのである。
 私の頭の中のイメージは左岸寄りを一気に下り、巨大ウェーブの上流部の波の低いところを突き抜けて、右岸へ渡ろうというものだった。
 まずは予定通り瀬を漕ぎぬけて、巨大ウェーブの手前まで下ってきた。
 しかしその後は、流れを突き抜けるどころか、まともに本流の強い流れに捕まって、一気に巨大ウェーブの方へと押し流される。
 こうなったらもう観念するしかなく、カヌーの向きを変えて、巨大ウェーブに正対した。水の中に沈み込んだカヌーが、一気に天に向かって放り上げられる。
 何度かそれを繰り返した後、ようやく波の中から開放される。ホッとして右岸を眺めると、ようやくそこがゴール地点だったことに気が付いた。
 直ぐに上陸してレスキューロープを取り出す。
 心配なのはKenjiさん艇である。
 ここでもやっぱり、わざわざ波の一番高いところばかりを選んでいるかのように下ってきて、まともに巨大ウェーブへと突っ込んできた。
 大型カナディアンがこんな波の中を下るのは、傍から見ているととても迫力があるものだ。


敢えて波の高いところを   波間に沈み込む
敢えて波の高いところを狙っているような・・・   巨大ウェーブに突っ込む寸前

 無事にウェーブを乗り越えて、後は右岸のエディに入るだけ。
 この時の方が、見ているものをハラハラさせてくれた。
 ウェーブを乗り越えてホッとしたのか、そのまま真っ直ぐに下っていってしまう。
 「お〜い、こっちだぞ〜」
 ようやく向きを変えたけれど、そのままどんどん下流へと流されて、ギリギリで最後のエディに入ることができた。


巨大ウェーブで
凄い迫力!

 こうして、石狩川のダウンリバーが無事に終了。
 心配されたカナディアン3艇も、沈することも無く増水した石狩川を下りきることができた。
 後で聞いたのだけれど、旭川CCの方々が「夫婦でカナディアンに乗ってこんな川を下るなんて信じられない」と話していたそうである。
 それを聞いた時、こんなことをして遊んでいる自分達がちょっとだけ誇らしく思えて嬉しかった。

 2009年6月14日 雨
当日12:00石狩川水位(上川観測所) 325.92m
写真提供 サダ吉さん


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