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空知川

(国体コース ~ 山畔橋)

 カヌークラブの7月例会二日目は、当初はかなやま湖より下流の空知川を下る予定だったけれど、金山ダムの放水量が絞られているのか、水不足のために何時もの国体コースから下の空知川上流部に変更になった。
 ダムの下流部分については、私がカヌークラブに入ったばかりの5年前に下ったことがある場所である。
 最近はOC-1で楽しそうに下っているO橋さんも、その頃は奥さんと娘さん二人をカナディアンに乗せて下る良きパパであった。そして5年前にここを下った時は途中でカヌーが岩に引っ掛かって転覆し、親子4人が仲睦まじく空知川を流れていったのである。
 下流部はそんなファミリーでも下れる比較的穏やかな流れなので、今回は川でカヌーに乗るのが初めてという新メンバーのT橋さんも張りきって参加していた。
 それが突然、上流部に変更。初心者でも、国体コースの終わったところからスタートして、途中の噴水の瀬もポーテージできるから大丈夫だろうと軽く考えて出された結論である。
 でも、実は全然大丈夫でないことを私は良~く知っているのだ。
 我が家が初めて空知川のこの区間を下ったのはほんの4年前、それまでにも色々な川を20回近くは下っていて、そろそろ初心者レベルから脱せるかなと思っていたころである。
 その時は騙されて国体コースからスタートすることになったのだけれど、国体コースを過ぎた後も結構ハードな瀬があって、昼の休憩時にはもうヨレヨレになっているような有様だった。
 そんな川なのに、「大丈夫だ」の一言で、今日が川デビューの人を下らせてしまおうとするのだから、何てひどいクラブなのだろう。
 この「大丈夫」の本当の意味は、「死ぬような危険な場所は無いから大丈夫」と言うことなのである。
 そして結局、「まあ怪我さえしなけりゃ大丈夫かな」と思ってしまう私も、いつの間にかこのクラブに染まってしまっているのかもしれない。

 我が家のかみさんは、「今日はのんびり下るつもりだったから」と言って、国体コース下から乗り込むことになった。
 他にもベテラン女性メンバー二人と川下り3回目のK藤さん、川下り初心者の大学生の息子さんを連れてきたY谷さん親子、そして今日が川デビューのT橋さんが国体コースを終わったところから合流することになった。
楽勝で下れる三段の瀬 私の場合、カナディアンの一人乗りで激しい瀬の中を下るのはこれが初めてである。過去に一人で下ったことがあるのは千歳川と後志利別川だけで、他は全てかみさんとのタンデム。
 本当に一人で大丈夫だろうかとちょっと心細く感じていた。
 でもそんな心配も、スタート地点から三段の瀬まで下っている間に直ぐに解消してしまった。この間も結構きつい流れになっているのだけれど、何の問題も無く自分の思い通りにその中を漕ぎ下ることができたのである。
 少し自信を付けて三段の瀬に突入。瀬の波の一つ一つをしっかりと確認しながら、その間を漕ぎぬける。これは初めて味わう感覚だった。
 何時もならバウに座っているかみさんに視界を遮られ、直前の様子は何も分からない。それが一人で乗っていると、目の前の波の様子を確認しながら思い通りにカヌーを操作することができるのだ。
そして次のパチンコ岩。2度連続でその岩をかわしきれずにカヌーの横腹を激突させていたのに、今日は何の苦労も無くパチンコ岩の左から回り込むことができた。

思い通りに

 そして最後の渡月橋の落ち込み。昨日と同じように右側から入ろうと思っていたけれど、突然気が変わってちょっと難しそうな左側から入ることにした。
 それも難なくクリア。
 最後の瀬も気持ちよく漕ぎぬけて国体コースが終了。

途中で左にルート変更   ここも楽勝!

 自分でも驚くくらい簡単に国体コースを下ってきたような気がする。
 今までカナディアンカヌーは二人で乗る乗り物だと思い込んでいたけれど、それはたまたま座席が二つ付いているだけであって、実際は一人で乗る乗り物だったことを今になって知ることができた。
 そのカナディアンカヌーを二人で乗りこなそうと言うのは、より難易度を求めるような、ほとんど趣味的な遊び方なのかも知れない。
 しかし、ついに知ってしまったその真実は私の胸の奥深くにしまいこみ、「いや~、やっぱり一人で乗るのは大変だったな~。カヌーはフラフラするし、二人で漕いだほうがずーっと楽だよね~。」と下流で待っていたかみさんに報告する自分であった。

穏やかな川下りのスタート そしてそこからが本当の例会のスタートである。
 川初デビューのT橋さんは相当に緊張しているみたいだ。
 静水と流水では感覚が全く違う。私が初めて流水を漕いだのは釧路川だった。蕩蕩と流れる釧路川と渓流の様相のここの流れとでは全く違うけれど、何もしなくてもどんどん流されていくのはまさに恐怖である。
 釧路川には何も障害物は無いけれど、ここは障害物だらけ。必死の形相でパドリングするT橋さんだけれど、パドルは水面をパシャパシャと撫でているだけで、ほとんど役に立っていない。
 自分の思った方向にカヤックを進めることもできないので、障害物や流れがカーブしているところではベテランメンバーが舟を寄せるようにして向きを変えてやっている。
 ほとんど周りを取り囲まれるようにして下っているT橋さんの姿を見ていて、今では伝説となっているK岡さんが初めてクラブの例会にデビューした時の話を思い出した。
 大増水した歴舟川の上流で、全く初心者のK岡さんが例会に参加。誰もK岡さんのレベルを知らなかったらしく、いざ下り始めたら何でもないようなところでも沈しまくり。途中でエスケープできるような場所も無く、全員でK岡さんを取り囲んで下り続けたと言う話。その後の会報に掲載されたK岡さんの手記によると、それを護送船団方式と現していた。
 今回、6年ぶりにその護送船団が復活したのだ。ピタリとT橋さんのカヌーに密着して漕ぐその様子は、護送船団というよりもススキノの街頭で客引きに取り囲まれていかがわしい店へと連れて行かれる観光客のように見えてしまう。
 そうして如何わしい瀬の前で連れてこられたT橋さんは、そこで一人放り出され、その後はなすすべも無く瀬の中を下るしかないのだ。

護送船団に取り囲まれて   初めて下る瀬

   それが素直な真直ぐな瀬ならば大丈夫だけれど、次に現れたのが流れがそのまま正面の崖にぶつかって左へ向きを変えている嫌らしい瀬。忘れもしない、我が家が初めて下った時に沈をした場所でもある。
 心配して見ていたが、水量が少なく流れのパワーも弱かったので、くるりとカヤックを回され反対向きになりながらも何とか無事にそこを通過。
 と思ったら、そこを出た後のエディラインでバランスを崩し、敢え無く沈。T橋さんの記念すべき初沈である。
 一生記憶に残るであろう初沈の場所としては、ここなら申し分の無い場所と言えるだろう。
 もっとも本人は、そんなことまで考えているはずも無く、呆然とした表情でレスキューされていたのである。

瀬の中で後ろ向きに   記念すべき初沈

 それにしても今日は天気も良く、水も最高に澄んでいて、これまで下った中でも一番の水の透明度かもしれない。
 シーソラプチ川の清流は空知川に合流した後も一切濁ること無く、ほとんどこのままの透明度を保ったままかなやま湖へ流れ込むのだろう。
 流れの緩やかなところでは漕ぐのを止めて、川底の様子を眺めながらただ流されていく。キラキラと輝く川底の石がとても美しく見える。
 そして時々現れる気持ちの良い瀬がまた楽しい。

澄み切った水   楽しい瀬

 T橋さんは今度は倒木に引っ掛かって舟を流され、その倒木の上に一人取り残されてしまった。細い流れなので、そこから川に飛び込めば簡単に対岸に流れ着くことができる。
 「そのまま飛び込んで!」、「足は下流に向けたまま流されて!」
 皆で周りから声をかけるけれど、T橋さんは倒木の上で呆然としたまま。ようやく覚悟を決めて川に飛び込んだけれど、結局、頭を下流に向けたまま流れていったのである。
昼の休憩 そうして昼食の休憩となった。
 我が家が初めて空知川のこの区間を下った時も同じ場所で休憩したけれど、その時はもう精根使い果たして、ヨレヨレになりながら上陸したものである。
 T橋さんもきっとその時の私と同じ感覚、いや、それ以上にヨレヨレになっているかもしれない。それでもまだ、ゴールまでの半分しか下ってきてないのだ。

 休憩後は幾つか瀬を過ぎて、いよいよ最大の難所噴水の瀬までやってきた。
 最近のクラブの例会では瀬の下見をすることはほとんど無くなったけれど、何故かこの噴水の瀬だけは何時も皆で下見をしてしまう。
 今回は水量が少ない分、落ち込みの落差も大きく、そしてその落ち込みの先の何時もは何も無い場所に岩が顔を出していたりして、ちょっとビビッてしまった。
 初心者は当然ここはポーテージ。もしかしたらかみさんまで「ポーテージする」なんて言い始めるかと思ったけれど、今回はそんな素振りは全然見せない。
 アリーからフリーダムに変わったことで、結構自信を付けているみたいだ。
 ベテランメンバーが先に下る様子を見てから、自分達の舟まで戻る。
 そして私達の前に下って行ったF谷さん新婚夫婦、瀬の途中に顔を出していた岩にもろに乗り上げたらしく、そのまま沈。やっぱり、その岩が問題になりそうだ。
 そしていよいよ自分達の順番。手前の隠れ岩を避けているうちに落ち込みへの進入方向が予定より右向きになってしまった。
 横からの波にもバランスを崩さずに落ちれたけれど、そのままでは正面の岩に乗り上げてしまう。
 かみさんが必死に左側へドロー、私もクロスでドローを入れるけれど、カヌーの向きが変わらない。
 「やばい!ぶつかるぞ~っ!」
 もうダメかと覚悟を決めたら、我が家のカヌーはスルリとその岩の上に乗り上げてしまった。そしてそのままスルリと岩を滑り降りて、何事も無かったかのように噴水の瀬をクリア。

進入角度が悪い!

あらら・・・

 カヌーの底に付いたであろう傷のことを気にさえしなければ、まあ満足できる結果である。
 直ぐにカヌーから降りて撮影ポジションへ向かう途中、K岡さん、O橋さんが続けて沈脱。
 K岡さんはこの噴水の瀬が大の苦手らしく、下る前からテンションが下がってしまっていた。確かに今までの例会の写真を見ても、噴水の瀬に片岡さんの姿はどこにも見当たらず、常に腹を向けたカヤックが白波の中に写っているだけなのである。
 他にもカヤックで沈をする人もいたけれど、ロールで何とか起き上がってくる。この急な流れで、しかも岩だらけ。そこをロールで起き上がるなんて、普通に下るよりも難しそうな気がする。
 その後は皆無事に下って、今日の例会の大イベントは終了。
 そこから先、ゴール地点までは穏やかな流れが続いている。流れに舟をまかせてのんびりと下りゴールへ到着。
 素晴らしい清流をたっぷりと満喫できた2日間の例会はこうして無事に終了した。

K岡さん?   I田会長


2007/8/19 晴れ
12:00空知川水位(幾寅観測所)353.90m




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