T橋さんは今度は倒木に引っ掛かって舟を流され、その倒木の上に一人取り残されてしまった。細い流れなので、そこから川に飛び込めば簡単に対岸に流れ着くことができる。
「そのまま飛び込んで!」、「足は下流に向けたまま流されて!」
皆で周りから声をかけるけれど、T橋さんは倒木の上で呆然としたまま。ようやく覚悟を決めて川に飛び込んだけれど、結局、頭を下流に向けたまま流れていったのである。
そうして昼食の休憩となった。
我が家が初めて空知川のこの区間を下った時も同じ場所で休憩したけれど、その時はもう精根使い果たして、ヨレヨレになりながら上陸したものである。
T橋さんもきっとその時の私と同じ感覚、いや、それ以上にヨレヨレになっているかもしれない。それでもまだ、ゴールまでの半分しか下ってきてないのだ。
休憩後は幾つか瀬を過ぎて、いよいよ最大の難所噴水の瀬までやってきた。
最近のクラブの例会では瀬の下見をすることはほとんど無くなったけれど、何故かこの噴水の瀬だけは何時も皆で下見をしてしまう。
今回は水量が少ない分、落ち込みの落差も大きく、そしてその落ち込みの先の何時もは何も無い場所に岩が顔を出していたりして、ちょっとビビッてしまった。
初心者は当然ここはポーテージ。もしかしたらかみさんまで「ポーテージする」なんて言い始めるかと思ったけれど、今回はそんな素振りは全然見せない。
アリーからフリーダムに変わったことで、結構自信を付けているみたいだ。
ベテランメンバーが先に下る様子を見てから、自分達の舟まで戻る。
そして私達の前に下って行ったF谷さん新婚夫婦、瀬の途中に顔を出していた岩にもろに乗り上げたらしく、そのまま沈。やっぱり、その岩が問題になりそうだ。
そしていよいよ自分達の順番。手前の隠れ岩を避けているうちに落ち込みへの進入方向が予定より右向きになってしまった。
横からの波にもバランスを崩さずに落ちれたけれど、そのままでは正面の岩に乗り上げてしまう。
かみさんが必死に左側へドロー、私もクロスでドローを入れるけれど、カヌーの向きが変わらない。
「やばい!ぶつかるぞ~っ!」
もうダメかと覚悟を決めたら、我が家のカヌーはスルリとその岩の上に乗り上げてしまった。そしてそのままスルリと岩を滑り降りて、何事も無かったかのように噴水の瀬をクリア。
↓
カヌーの底に付いたであろう傷のことを気にさえしなければ、まあ満足できる結果である。
直ぐにカヌーから降りて撮影ポジションへ向かう途中、K岡さん、O橋さんが続けて沈脱。
K岡さんはこの噴水の瀬が大の苦手らしく、下る前からテンションが下がってしまっていた。確かに今までの例会の写真を見ても、噴水の瀬に片岡さんの姿はどこにも見当たらず、常に腹を向けたカヤックが白波の中に写っているだけなのである。
他にもカヤックで沈をする人もいたけれど、ロールで何とか起き上がってくる。この急な流れで、しかも岩だらけ。そこをロールで起き上がるなんて、普通に下るよりも難しそうな気がする。
その後は皆無事に下って、今日の例会の大イベントは終了。
そこから先、ゴール地点までは穏やかな流れが続いている。流れに舟をまかせてのんびりと下りゴールへ到着。
素晴らしい清流をたっぷりと満喫できた2日間の例会はこうして無事に終了した。 |