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尻別川

(中野橋 ~ 羊蹄大橋)

 翌日の朝に用事があるのでキャンプへは行けないし、天気が良くて気温も高い。こんな週末に何をしようかと考えると、川へ行くことしか思いつかない今日この頃である。
 某カヌークラブが千歳川でカッパ(水中メガネとシュノーケルを付けて川の中を流される遊び)をすると聞いていたけれど、それよりも尻別川を下りたい気分だった。青空が広がっている時に、羊蹄山の姿を眺めながらの川下りは本当に楽しいのだ。
 私の入っているクラブの掲示板で仲間を誘おうかと考えたけれど、かみさんは尻別川なら単独で下りたいと言う。単独と簡単に言うけれど、車の回収のためにゴールからスタート地点まで自転車で走らなければならないのはこの私である。
 まだ残暑の厳しい炎天下、自転車を漕がされる方も堪ったものではない。
 でも、のんびりと単独で下る尻別川も楽しいかもしれない。それに、尻別川のラフトコースの場合、川は大きく蛇行しているけれどスタートとゴールはほぼ直線の道路で繋がっているので、自転車で走る距離も短くて済むのだ。
と言うことで、快晴の土曜日は尻別川ラフトコースを我が家単独で下ることにした。

羊蹄山が美しい

 スタート地点の中野橋に到着すると、ラフト業者が大量のラフトをトラックから降ろしているところだった。
 我が家も車からカヌーを降ろし、そのままゴールの羊蹄大橋まで車で移動。そして、そこに車をデポして自転車でスターと地点まで戻ってくる。
 自転車での移動距離は5.5km程だけれど、起伏が結構あるので、それなりにハードである。右手に見える美しい羊蹄山の姿が、へばり気味の私を励ましてくれる。
 ラフト業者のバスやトラックが道路を行き来し、北海道の小中学校の夏休みが終わってもまだまだ繁盛しているようだ。
 中野橋まで戻ってくると、そこにはラフトも人の姿も見えなくなっていた。かみさんの話によると、川を埋め尽くすような大量のラフトが下っていったばかりだという。
 そんな混雑に巻き込まれなくて良かったとホッとしながら出艇準備をしていると、2艇のラフトとその客さんたちが川原まで下りてきた。こちらの方はこじんまりとしたツアーのようである。
 私達の方が先にスタートする。

川を埋め尽くすラフト   静かになってからスタート

 そこから直ぐ下流に寒別発電所の放水口があり、その水のおかげでここから下流は常に安定した水量が保たれ、渇水時期でも楽しく下ることができる。
 この放水口から下流700m程の区間は岩が多くて、下るルートを間違えると直ぐに座礁してしまう。水が増えるとそんな心配も無くなりそうだけれど、その分ハードな瀬に変わるのだろう。
 我が家がこれまでに下ったのは水が少ない時期ばかりなので、何時も岩を避けるのに忙しい目に遭わされる。
 木陰になっているエディがあったのでそこにカヌーを入れて一休み。カヌーの上で横向きに座って足を川の流れに浸けていると、ひんやりとして気持ちが良い。
 しばらくすると先ほどのラフトが下ってきたので、手を振ってそれを見送る。家族連れのお父さんらしき人がこちらを見て「良いな~。」と羨ましがっていた。
 もしかしたらこのお父さん、家に帰ってから「カヌーを買おうか?」と家族会議を開いているかもしれない。
 ラフトも良いけれど、もっともっと沢山の人たちにカヌーの楽しさを知ってもらいたい気がする。そして今日はこのお父さんに、とっても気持ち良さそうにカヌーを楽しんでいる様子を見せることができて、少し良いことをしたような気持ちになれた。

岩だらけの瀬   延々とこんな区間が続く

  岩がゴロゴロする区間をようやく下り終わって、穏やかな流れへと変わった。
 その先にやや落差のある瀬がある。真直ぐな流れなので全く緊張することも無くそこを下り降りた。
 今年の夏は忠別川やシーソラプチ川、空知川と連続して下り、自分で言うのも何だけれど、随分カヌーが上達した気がする。
落差のある瀬 それは技術的に上達したと言うことではなくて、瀬に対する恐怖心がかなり薄れてきたのでそんな気がするのかもしれない。
 恐怖心が無くなってしまえば、瀬の中を下る時はもう爽快感しか感じない。今まで以上に川を楽しむ余裕もできてくる。
でも、アドレナリンがドッと出てくるような緊張感の中で、頭の中を真っ白にして瀬の中に突入する時もまた別の意味で爽快である。
 以前はちょっとした瀬でも簡単にそんな感覚を味わえたのに、慣れてくるにしたがってそんな楽しみに出会える場所も少なくなってきたのはちょっと寂しい気もする。
 そこから先はしばらく穏やかな流れが続く。こんなところでは漕ぐのを止めて、川の流れに舟を任せてただ流されていく。
 単独で下っていると、周りのペースに合わせる必要も無く、こんな風に気ままにできるのが良いところだ。
 寒別橋の下を抜けてしばらく下ると、カヤック2艇と出会う。川を下るのではなくてスポットで遊んでいるみたいだ。今日の天気に誘われて川に出てきたと言う雰囲気である。
 この日は結局、他のカヌーに出会ったのはこの2艇だけだった。
 天気の良い週末、観光地はどこも大混雑。キャンプ場も、山の上も、釣りのできる海岸や港も人で一杯。静かに遊べるのは川の上だけだ。場所によっては釣り人に占領されているような川もあるけれど、それ以外では混雑とは無縁の世界で遊べるのがカヌーである。
 たまにクラブの例会で、川の上がカヌーで大混雑と言った場面も見られるけれど、それはそれでまた楽しい光景だ。

右側ルートの瀬 川が大きく左へ曲がるところが瀬になっていた。
 流れも二筋に分かれていて左側の方は浅いザラ瀬で先の方まで見通せる。
 右の方の流れは崖の下に沿って流れているみたいだけれど、先の様子が全く見えない。
 この右側ルートは確か以前にも下ったことがあり、下見するのも面倒なので、そのまま突っ込んでしまう。
 単独行なのでもう少し慎重に下った方が良いのだろうけれど、少しはスリルも味わってみたくなるのだ。
 若干トリッキーな流れになっていたけれど、特に危ない箇所も無く余裕で下ることができた。
 そしてその次がこの区間のクライマックスである二股の瀬だ。
 ここでは一応カヌーを降りて下見してみる。初めてここを下った4年前は、下見をしているだけで緊張して口の中がカラカラに乾いてきてしまったものだ
 その時と流れの様子が変わったのか、それとも自分の感じ方が変わったのか、今はどうってことの無い瀬に見えてしまう。
 その瀬の中の上流部分にポコリと頭を出している大きな岩が嫌らしいけれど、それさえ避ければ後は波が高いだけの素直な瀬である。
 その波でフリーダムのバウを大きく跳ね上らせながら、二股の瀬をクリア。以前のアリーの場合は、こんなところでは波の形状に合わせて大きくしなる感じで下っていたので、感覚がかなり違っている。
 安定感ではやっぱりフリーダムの方が優れているのだろう。そのフリーダムに乗っていると、安心して波の頂点を攻められるのが楽しいところだ。
 この二股の瀬だけれど、現在の渇水状態でも水が横に溢れ出しそうになって流れている。もう一度くらい尻別川が大増水したら、その形状も変わってしまいそうな気がする。

二叉の瀬(上流から)   二叉の瀬(下流から)

 二股の瀬の下流にもしばらく瀬が続いているが、そこを漕ぎ下ったところで、ちょうど日陰になっていて上陸できそうな場所を発見。そこで昼食をとることにした。
 気温はかなり上がっているはずなのに、川面を吹いてくるひんやりとした風で、肌寒ささえ感じてしまうくらいだ。
 糸の付いた小さなルアーが落ちていたので、かみさんが木の枝の先にそれを結びつけて釣りを始めた。遊びのつもりかと思ったら、それで本気で釣ろうとしているようなので笑ってしまう。
 ルアーよりも小さな何かの稚魚が追ってきているみたいだけれど、自分の体よりも大きい針に喰い付くわけが無い。
 かみさんがようやくそのことを理解して諦めたところで、再び下り始める。

昼食の場所   魚釣り中

 そこからゴールまでは瀬らしい瀬も無くなり穏やかな流れが続いている。
 川が大きく南に流れを変えると、羊蹄山がその正面に見えてきた。
 尻別川の喜茂別から京極までの区間は、もっと沢山の場所から羊蹄山の姿を楽しめるのだけれど、今回下った区間ではここが唯一のビューポイントかもしれない。

羊蹄山のビューポイント

  川岸の様子を観察していると、あちらこちらから湧き水が染み出してきているのに気が付く。
 羊蹄山やニセコ連峰、その他周りの山々からの伏流水がこうして尻別川へと注いでいるのだろう。それにしてはもう少し綺麗な流れであっても良さそうな感じだけれど、周辺がこれだけ開けていてはこれ以上を望むのは無理なのだろうか。
 京極町を界に、その上流と下流では水の透明度にもかなり差があるような気がする。
 そうしてゴールの羊蹄大橋の川原に到着。
 広々とした川原に上陸すると、それまで忘れていた真夏のような暑さが戻ってきた。
 こんな日はやっぱり川で遊ぶのが一番である。


2007/8/25 晴れ
12:00尻別川水位(倶知安観測所)167.22m




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