カヌークラブの例会最終日は空知川のダウンリバー、国体コースから山畔までの何時ものコースだ。
前日の素晴らしい天気と打って変わって、この日は朝からどんよりとした曇り空である。
川下り3日目ともなると体力的にも辛くなり、なかなかテンションが上ってこない。3日間全てに参加するのはI田会長とI林君、そして我が家の3組だけである。
アリーの状態も心配なので、我が家は国体コースが終わったところからスタートしようかとかみさんと話していた。
それを聞いたA美さんは、私もそこから一緒に下ると言っている。昨夜到着したA美さんは、今しーずん初のダウンリバーだとか。しかも舟はまだ乗りなれていないロデオ艇なので、自信無さげなのである。
まずは国体コーススタート地点に全員が集まった。ここまできて国体コースをパスするのも面白くないので、我が家もそこで車からカヌーを降ろすことにする。
それを見ていたA美さん、「えっ、何で?、国体コースの下から下るって言ってたじゃない!この裏切り者〜。」
ショックを受けたA美さんは、川下りそのものをやめてしまった。
ちょっと責任を感じてしまったけれど、A美さんはその日の午後7時から仕事の予定もあり、私達以上にテンションが下がり気味だったみたいだ。
上陸地点に車を回して戻ってくると、そのA美さんがドライスーツにライフジャケットと完全装備で身構えていた。
「なーんだ、結局下ることにしたんだ。」と笑うと、すかさずレスキューロープを差し出してきた。国体コースでのレスキュー役を引き受けてくれると言うのである。
自分で下らなくても、こうしてサポートしてくれるのがクラブメンバーの良いところだ。
それにしても、一向にテンションが上ってこないのに、いきなり国体コースを下ると言うのは結構辛いものがある。
「うっしゃ〜!、気合入れてくぞ!、今日は完璧に三段の瀬をクリアするからな!!」
かみさんに気合を入れたが、本当に入ったかどうか、今一心配である。
下るルートは昨日と同じで全く問題ない。後は昨日のようにかみさんがカヌーの中でひっくり返らなければ良いだけだ。
昨日と同じように手前の岩の右側から入り、岩を左に巻くように落ち込みへ突入。波を乗り越えて無事に落ち込みクリア。
がしかし、またしても私の目の前で信じられない光景が演じられていた。
昨日と同じようにカヌーの上でひっくり返り、舳先にしがみ付いているかみさん。
昨日は何とかそこでバランスを取り戻したけれど、今日はそうはいかなかった。カヌーから落ちそうになりながらも、未練がましくまだしがみ付いているかみさん。
「な、何する気だ〜!!!」
まるでヘッドロックをかけてねじり倒すような技で、アリーもろとも水中に引きずり込もうとしている。
ついにその捨て身の強烈な技に耐えられず、私もアリーも三段の瀬の白波の中に飲み込まれてしまった。
そもそも、カヌーの上でひっくり返るということはこれまで一度も無かったのに、それを三日連続でやられてしまったのには呆れるしかない。
かみさんは、アリーが歪んでいるせいだと言い張っているが、それにしてもどうやったらカヌーの上でひっくり返るのだろう。
二日連続での沈。でも、これでようやく身体がシャキッとした感じになった。
空知川での沈は全然苦にならない。
次は渡月橋の落ち込み。今日こそは最初に考えたとおりのコースで下ろうと心に決めて、そのとおりに無事にクリア。
それでも水流に押されて危うく右岸にぶつかりそうになり、ヒヤッとさせられた。この落ち込みを楽勝でクリアできるのは一体何時になるのだろう。
国体コースが終わって、そこから先の空知川を下るのは久しぶりな気がする。
去年の7月の例会でも下っているのでそんなに間は開いてないのだが、シーソラプチを何度も下っているのでそんな気がするのかもしれない。
中州で分流しているところがあり、右岸側の流れに入る。そして再び合流する手前で流れが正面の岩壁にぶつかり左に90度曲がっているところがある。
初めてここを下った時、その岩壁を避けようとしてカヌーを傾けすぎ、そのまま沈してしまった思い出の場所だ。
今そこを下っても、それほど難しい流れには感じない。
当時は沈した後にそこの川原で小休止したけれど、そこでもう足腰がふらつく位に疲れきっていたはずである。
そんな昔のことが懐かしく思い出された。
以前のこの場所は分流していた記憶が無いので、ここも2週間前の大増水で流れが少し変わったかもしれない。
そこから先は、一箇所だけ倒木がらみの場所でポーテージしたけれど、その他はいたって穏やかな流れが続いていた。
「空知川ってこんなに穏やかな川だったろうか?」
大増水により川が綺麗に均されてしまったように感じる。
そこまで下ってきても、水の透明度は上流部とほとんど変わりが無い。
カヌーの下を流れていく美しい川底の石を見下ろしながら、のんびりとした川下りが続く。
川岸の倒木に丸いものがぶら下がっているのが見えたので近づいてみると、それはカボチャだった。良く見るとそこら中にカボチャが転がっている。
倒木にはビニールの切れ端も沢山引っ掛かっていて、その付近のカボチャ畑が増水で流されたのだろう。
根元の土がごっそりと削り取られ、今にも川の中に倒れそうになっている樹木も沢山ある。
実際に、最近倒れたばかりらしくまだ青々とした葉を沢山つけたままの樹木が、川をほとんど塞いでいるようなところもあったりして、自然の力を間近に見せ付けられる。
この手付かずの状況が、空知川を清流のままに保っている理由なのだろう。人家や畑が近くにあれば、直ぐに洗掘防止の護岸工事等がされるのだろうが、そんな人工の構造物が川の浄化能力を低下させているのかも知れない。
少し流れが速くなってきたなと思ったら、先行していたメンバーが右岸に上陸した。
いよいよこの区間のメインイベント、噴水の瀬である。
先日美瑛川を下ったときに、噴水の瀬をもっと大きくしたような感じの瀬があったけれど、実物の噴水の瀬を間近に見ると、やっぱりこちらの方が迫力がある。
でも、噴水の瀬はこれまでに2戦2勝なので、それほど苦手意識は無い。
ただ、何時もは水中に隠れてしまっている岩が、水が少ないので水面に出てきているのがちょっと嫌らしく見える。
まずはカメラマンとして、皆がそこを下る様子を撮影する。
ガンネルズのT木さんは、わざわざ落差の大きいところから瀬に入って、波に煽られながらも見事にクリア。
噴水の瀬がトラウマとなっているS吉さんもOC-1で見事にクリア。もっとも、途中の岩陰のエディにくるりと入ったのは、意識してのものなのか、岩にぶつかった拍子に偶然そうなってしまったのかは定かではない。
I林君は沈したものの、何度目かのロールでかろうじて起き上がることができた。I林君の場合、何度もロールに失敗して、これはついに沈脱かと周りのギャラリーが思い始めた頃にむっくりと起き上がってくるのが持ち味なのである。
|