自然の堰堤のように川底の岩が横一列に並んでいるような場所が続けて現れてきた。特に下るのには問題は無いが、川底の様子に気を付けていないと突然座礁してしまうことになる。
そこを通り過ぎると今度は本物の堰堤が川幅一杯に広がっていた。落差は30cm程度で、底を擦りながらも何とか通り抜けられる。以前はもっと落差のある堰堤だったが川の土砂で埋まってしまったのだろう。もう少し水量が増えればそこに堰堤があることさえ気がつかずに下ってしまいそうだ。
相川橋が見えてきた。
そこでは、この後函館まで帰らなければならないI林君だけが先に上陸することになる。
I林君を見送った後、相川橋の下をくぐり抜ける。
ここは少し荒れた瀬になっていて、その先に崩れたコンクリートの古い橋脚があるものだから、ちょっと嫌らしい場所だ。
そこでコース選択を間違えてしまい、浅瀬の岩に乗り上げてしまった。同じ岩乗りでも、昨日の様に岩を避けきれずに乗り上げるのとは違って、精神的なショックは感じない。
ズリズリとカヌーを引きずってそこを脱出。その後は川幅も思いっきり広がり、しばらくすると昨日下ったヌビナイ川と合流した。
二つの川の水が混ざり合うところで両方の水に手を入れてみたところ、歴舟川本流の方が少し暖かく感じる。見かけは似たような川でも、やっぱり本流と支流は違うみたいだ。
後は昨日と同じコースでキャンプ場まで下るだけだ。
その途中に流木が沢山張り付いている古い橋脚がある。そこを大きく避けることもできるけれど、浅瀬に入って歩かなければならなくなるので、昨日はギリギリのところでその橋脚の直ぐ下流に出るルートを通った。
それでもやっぱり底を擦ってしまったので、かみさんは今日は橋脚の直ぐ上流部分から入るつもりらしい。
「結構大胆なことするな〜」と思いながらも、直ぐに左に向きを変えれば別に問題は無さそうだ。
予定通り座礁することなくカヌーは流れに乗って進む。
「はい、そこでドロー」心の中でつぶやく。
「ド、ドロー・・・って、ど、ど、どうしてフォワードなんだ?」橋脚に張り付いた倒木の山が目の前に迫ってくる。
「ドローだろっ!!」声を張り上げるとようやくかみさんが反応した。
「遅すぎ・・・」
かみさんが思いっきり体を乗り出してドローを入れるものだから、カヌーが大きく左に傾く。
上流側に沈してそのまま橋脚に張り付いたら一巻の終わりである。橋脚を避けるのは諦めてカヌーの体勢を元に戻す。
そしてカヌーが横向きになったまま倒木の山へ。その倒木に手でつかまりながらカヌーをずらして、何とか脱出できた。
流れにそれほど力が無かったのでそれで済んだが、ちょっとヒヤッとした瞬間である。
もしもここでアリーを潰していたら、「何で、何も無いこんな広い場所で、真ん中にポツンと立っている橋脚に、わざわざ好き好んで張り付くわけ?」と呆れた目で見られることになっていただろう。
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