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雨竜川(カヌークラブ6月例会)

(幌加内町政和 〜 雨煙別橋)

 6月の例会は雨竜川、3週間前にここを下見で下った時は雪解け時期の大増水だった。
 しかしその後、上流の朱鞠内湖のダムが放水を止めた途端に川の水位は急激に下がり、インターネットでその水位の変動を見ていたメンバーは、雨竜川にはほとんど水が流れていないのではと心配する状況になっていた。
 それでも前日に川の様子を見たかぎりでは、ほどほどの水量があり、問題なく下れそうである。
 下見の時は濁流の中で少しだけ頭を出していた岩が、現在はその全貌をあらわにして川の真ん中にどっかりと居座っている。前回はその岩の上をなすすべもなく流されていったかと思うと、何か不思議な感じがする。
 大波に揉まれて沈をした鉄橋上流部分は、岩だらけの瀬となっている。我が家のアリーにとっては、そこが最大の難所となりそうだ。
 他にも岩が出ているカ所が多いので、無事に下れたとしてもアリーの底に穴が開くのは確実だろう。どうせならば、前回と同じ大増水の中を下りたかったような気もする。

 
大きな岩の間を川がゆったりと流れている   3週間前の状況、一番大きな岩の頭だけが見えている

 キャンプ地のほろかない湖公園から集合場所のせいわ温泉ルオント駐車場に移動し、そこで新たなメンバー2名が加わりスタート地点へと向かった。
 ルオント駐車場では一時雨も上がって周りの山もくっきりと姿を現したが、スタート地点では再び雨が降り出してしまった。
雨と蚊の中で車を待つ そして車から降りた途端、待ってましたとばかりに大量の蚊が一斉に群がってきた。血に飢えた蚊とはまさに此奴らのことである。
 普通の蚊ならば、まずは人間の周りをゆっくりと飛び回り、気づかれないようにそっと剥き出しの肌に留まり、そして遠慮がちにプスッと針を刺すところであるはずだ。
 それがここの蚊と言ったら無節操そのものであり、人間を見つけたらそのまま突進してきて、肌が露出していようが隠れていようがお構いなく、髪の毛やドライスーツの上からでもブスッブスッと針を突き立てまくるのである。
 そんな蚊の襲撃をかわしながらカヌーを車から降ろして、次は車をゴール地点まで移動する。その間、運転手以外の人間はざーざー降りの雨と蚊の攻撃に耐えながら、じっと待っていなければならないのが辛そうだ。
 それでも今回は下る区間が短いので、車の回送にもそれほど時間がかからないのが幸いだった。

 そうしてやっと雨竜川にカヌーを浮かべた。
 陸上では鬱陶しく感じる雨も、川の上に出てしまえば大して気にならない。
 蚊の数も川の上の方が少ないようである。それでも各メンバーの頭の周りには常に10匹くらいの蚊が飛び回っているようだ。
 我が家はライフジャケットのポケット中にハッカスプレーを忍ばせていたので、時々それを頭の回りに吹き付ける。このハッカスプレーは普通の虫除けよりも効果が大きいし、小型なので、こんな時には便利である。
 カヤックのメンバーがロールを繰り返しているので、ずいぶん最初から張り切っているなーと思っていたら、単に蚊の襲撃から逃げるためにロールをしていただけの話しだった。
新緑の雨竜川 雨も小降りになって、それまで霞んでいた周囲の山の景色がくっきりと見えるようになった。雨に洗われた新緑がとても美しい。
 川の流れもしばらくは穏やかで、そんな景色を眺めながらのんびりと川の上を流れていく。
 白鳥が一羽、川の上流に向かって飛び去っていった。北帰行に取り残された、はぐれ白鳥なのだろうか。
 やがて問題の鉄橋手前の瀬が迫ってきた。
 前回は大波が立っていた場所に大きな岩がでんと構えている。その大岩が隠れるくらい水量が多かったのかと思えばちょっとゾッとしてしまう。
 でも、その先が何も見えないのだけは前回と同じだった。
 当然一度手前に上陸して下見をするものだと思っていたら、見えなくなる手前まで進んでいったベテランメンバーが大きく手を振ってそのまま先に進み、直ぐに視界から消えてしまった。
 「えっ?まじかよー」
 そのまま行っても問題ないということなのだろうが、せめて下るルートだけは確認しておきたかった。まあ、下見をしてびびってしまうより、ぶっつけ本番の方が良いのかもしれないが。
 ゆっくりとカヌーを進め、いよいよその先が見渡せる場所までやってきた。前回は、その瞬間に目に飛び込んできた川の様子に圧倒されてしまったが、今回はある程度余裕がある。
 大きな落ち込みがあるわけでもなく、傾斜地を水が勢いよく流れているような感じなので、岩に引っかからないようにルートを選べば良いだけだ。
鉄橋手前の瀬 カヌーの底を擦らないよう慎重に前方の波の様子を窺いながら、瀬の中間まで下ってきた。
 前方に岩が顔を出している場所があり、そこで流れは左右に分かれている。そのまま下っていけば岩の左側を通過するようになるが、そこは波が岩に被さっているように見える。
 先行メンバーはそちらの方を下っていったみたいだが、我が家のアリーでは底を擦りそうな感じなので岩の右側を通過した方が良さそうだ。
 右漕ぎの私はドロー気味にパドルを操作して右にコースを変えようとした。
 「あれ?」
 カヌーが向きを変えない。
 かみさんは、何のためらいもなく左に進もうとして、左にドローしていたのである。
 「あっ、み、右だ!」
 一瞬の二人の呼吸のずれが命取りになる。
 岩の横の浅瀬に乗り上げて、カヌーは止まってしまった。
 乗り上げた部分を見てみると、先の尖った岩がカヌーの横っ腹にめり込んでいる。普通のリジット型のカヌーならば、そんな場所もゴツンとぶつかっただけですり抜けてしまうのだろうが、悲しいかな我が家のひ弱なアリーはそんな場所にピタッと張り付いてしまうのである。
鉄橋下で一休み その岩に足をかけてカヌーを外そうとするが、コケでヌルヌルしているので力が入らない。こんな時に無理をするとカヌーのダメージがますます大きくなるのは、これまでの経験で嫌と言うほど解っている。
 水流は斜め後ろからぶつかってきているので、それほど問題はない。これが真横から水圧を受けてしまうと、ちょっとまずい状況になっていただろう。
 反対側にやや浅い部分があったので、そちらに足をかけて腰を浮かすとスルリとカヌーが岩から外れた。慌ててカヌーに飛び込む。
 その後は気持ちよく波を越えて、鉄橋下まで無事にたどり着いた。その付近は流れも緩く、途中で沈したとしても問題なく岸までたどり着くことができる。

 前回はここで上がることができず、その後もひたすら流され続けたのである。
 その時にカヌーを引っ張りながら、必死になって泳いで避けた大岩が次に控えていた。水が減って周りの岩も姿を現しているので、岩の間を縫うように漕がなければならない。
 緊張しながら岩と岩の間にカヌーを進めたが、思っていたよりも流れが緩く何の問題もなくそこを通過することができた。
 その後は、前回波に揉まれながら流され続けた場所を、その時のことを思い浮かべながら感慨深く下り続ける。
思い出の漂着地点 そして、前回最後に流れ着いた場所に再び上陸して休憩を取った。
 こうして大増水の時と通常水位の時を続けて下るというのは、なかなか面白いものである。増水によって川の流れがどう変わるのか、身をもって体験することができた気がする。

 その後は、道路から見て一カ所だけ岩に引っかかりそうな嫌らしい場所があった。そこについては、かみさんとコース取りの打合せをしっかりとしておいたつもりである。
 しかし、実際に川を下りながらその場所にさしかかると、波に隠れて岩が全然見えない。
 ままよとばかりに真っ直ぐに波に突っ込んだが、心配していた岩には全然引っかからずに通過してしまった。案ずるより産むが易し、下見しすぎるのも考えものである。

美しい雨竜川 そこから先はほとんど問題になるような場所は無いはずだ。やっと緊張を解いて、のんびりと周りの風景を見回す余裕ができた。
 濃緑の針葉樹と浅緑の広葉樹が混ざる山肌の緑が美しい。芽吹きの頃の赤みがかった新緑の風景が私は好きだが、今時期の淡い新緑が雨に濡れた様子も感動的だ。
 河畔林はナラ類や白樺が多く、秋もまた美しい風景が楽しめそうである。ただ、水量がもう少し減ると今以上に下りづらい川になるかもしれない。
 ゴール地点まで、増水時は川の流れも速くあっと言う間に付いてしまった感じだが、山間部を抜けると川の流れも緩やかになり思っていた以上にゴールが遠く感じる。
 時間に余裕があれば、川の流れに身をまかせてのんびりと流されるのも楽しそうだが、クラブの例会ではそうもいかない。
 久しぶりに我が家単独の川下りもやりたくなってきた。
 そうしてゴール地点に到着。皆の顔は蚊に刺されてボコボコである。川下りが終わるのを待っていたかのように、また雨足が強くなってきた。
 雨と蚊に悩まされはしたが、美しい新緑と、そして何と言っても前回のリベンジを果たすことができて、いつも以上に充実感の残る川下りであった。


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