札内川、千歳川、鵡川と3週連続で川を下って、4週目はいよいよカヌークラブの例会で空知川を下ることになった。
今回の例会は初日に落合の国体コースから下流、二日目は上流のシーソラプチ川から国体コースまで。2回も国体コースを下れるとなると、メラメラと闘志が湧いてくる。
今のクラブに入って初めてこの国体コースに連れられてきた時、「本気でアリーでここを下るの?」と疑いの目を向けられ、「エーッ、今更そんなこと言われても、もう車からカヌーを降ろしちゃったし・・・。」
何も解らずに、無我夢中でここを下ったのが2年前の初夏であった。
今年は例年以上に川に出かける回数も増えて、きっとレベルもアップしているはずだ。なんと言っても、先週はあの岩だらけの鵡川を下っちゃったんだぞ〜、と誰に言うわけでもなく頭の中でそっとつぶやいた。
それにしても僅か1週間前、あの鵡川を下ったことがはるか昔の出来事に感じてしまうのは何故だろう。あの岩だらけの急流を下ったことを思えば、この国体コースなんて取るに足らない流れのはずなのだが・・・。
スタート地点に舟を浮かべ、いよいよ川下りのスタートである。
最初のやや急な流れに、何故かびびってしまう。1週間前の鵡川だったら、この程度の流れならホッと一息つきながら下れるようなところである。
鵡川を下った自信が、完全に何処かへ消し飛んでしまっていた。
そして直ぐに三段の瀬だ。
初めてここにチャレンジした時はチキンコースを選んだくせに敢えなく沈、前回は素直に三段の瀬にチャレンジして無事にクリア。
見た目は激しい流れだけれど、アリーのように大きな舟なら波に煽られることもなく、意外とすんなり下れるものである。
ここでは瀬の直ぐ手前まで行かないと、その先の様子がまったく見えない。今回は下見もしていないので、前を下るメンバーが流れの中に顔を出している岩の右側から入るのを見届けて、「よし!とりあえずあそこから入れば良いんだ!」
慎重にカヌーを進めて岩の右側を通過する。突然目の前に現れる急流、アドレナリンが一気に吹き出してくる瞬間だ。
横からの波に煽られることもなく無事に降りきった、と思った瞬間、何故かカヌーが大きく傾く。
「何で?」
毎度おなじみの沈の瞬間である。
後で考えると、どうしてあそこでリカバリーできなかったんだろうと後悔するのだが、沈する時は為すすべもなく水の中に吸い込まれるものである。
これまでの練習の成果を全て今回の空知川に注ぎ込んだはずなのに、最初からこの結果だった。
次に待ち受けるのは、これまで1勝1敗の渡月橋下の落ち込み。
初めて下った時は、落ち込みの手前で後ろ向きになってしまい、慌てて寸前で向きを変え何とか無事に下ったもののそのまま正面の岩にぶち当たるという、とてもクリアしたとは言えないような状態だった。でもとりあえずは1勝。
次の1敗は去年だった。流れに押されて右岸ギリギリから落ち込みへ。そこでアリーの底が岩にぶつかり、その衝撃でかみさんがカヌーの前方を飛び越えて頭から水の中へ落ちていったという、壮絶な沈をしていた。
はっきり言って、まともにクリアしたことは一度もない場所なのである。
しかし、三段の瀬と渡月橋の落ち込みの両方で沈をするわけには絶対にいかない。
この国体コースを舞台にして行われるカナディアンスラローム大会のビデオを、前日にたっぷりと見てきているので、コース取りもしっかりと頭の中にたたき込まれているのだ。
この渡月橋下落ち込みの前にはパチンコ岩と呼ばれる大きな岩がデンと構えている。その手前で流れは狭まり、急流となって正面のパチンコ岩にぶつかる。本流はその岩にぶつかった後、岩を巻くように左に流れていく。その他に岩の右側にも流れがあり、初心者はそちらの方が進みやすい。
既に初心者の域を抜け出しているはずの我が家は、当然のように左の流れへ入ることにした。
「狭いところを抜けたら直ぐにラダーを入れるんだぞ」
しっかりと打合せを済ませてパチンコ岩前の急流に入る。「よし、今だ!」
かみさんが大きく体を左に出してパドルを入れる。
そこでカヌーは急激に左に曲がるはずなのに、「あれれ?」、何の反応もしないでカヌーはそのままパチンコ岩に向かって突き進む。
「あっ、や、やっぱり右行こ!」
急な予定変更で、横向きになったまま岩が迫る。アリーの左側が岩にぶつかったが、何とか張り付かないでスルリと抜けることができた。
そして次は落ち込み。落ち込みの真ん中にも岩が顔を出している。
流れは右に向かっているが、去年は右に寄りすぎて壮絶な沈をしている。今回はその岩の左を目指す。左に寄りすぎると小さなエディに捉まって後ろ向きになってしまう恐れがある。岩の左ギリギリ、アリーの右側を岩にぶつけながら何とか落ち込みをクリアすることができた。
フーーッ。
ちょっと不満は残るが、沈をしなかっただけ良しとしよう。
後はのんびり下れると思ったら、その直ぐ下流にまた大きな波が立っていた。
オオッて感じだが、波が高いだけでこんな場所は水しぶきを浴びながら楽しみながら下ることができる。
その後幾つかの瀬をこえると、前方に見覚えのある風景が現れた。流れが真っ直ぐに前方の岩壁にぶつかり、そのまま左に直角に曲がる場所だ。
初めてここを下った時は慌てて左に曲がろうとしてそのまま上流側に沈、次の時は沈こそしなかったものの危うく岩壁にぶつかりそうになった。
それが今回は何の危なげもなくクリア。ここでようやく、少しは上達したのかなと言う実感を得ることができた。
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