ポーテージで体力を消耗して、ウイダーinゼリーの効果もすぐに消えてしまったみたいだ。
次の瀬に入ったとき、目の前に岩が現れた。
「右だ!」
それなのにかみさんは左へ行こうとする。またいつものパターンだ。
そこで無理をしたら真横に岩に張り付いてしまうし、もうどうしようもない。諦めて真正面から岩にぶつかると、そのままカヌーのバウが岩に乗り上げて止まってしまった。
完全なお手上げ状態であることはすぐに分かった。幸いカヌーは、流れに真っ直ぐな向きなので安定している。 まずかみさんをその岩に乗り移らせて、私もカヌーの前部に移動してその岩に移る。
「さて、これからどうしよう?」
そのままカヌーだけを下流に流し、人間は川に飛び込むしかなさそうだ。
そこへGさんが駆けつけてきてくれた。まずはカヌーだけを岸に渡す。岸と岩の間はそれほど離れていないので、カヌーを横に向ければ手が届く距離である。
そして次に、レスキューロープを投げてくれた。
そのロープを掴んで、「えーっと、これを掴んだまま飛び込めば良いのかなー、でもすぐ下は落ち込みになってるし、すんなり上がれそうにないかも・・・。」と考え込む。
恐る恐る川に入ろうとしたら、Gさんから「違う違う、まずは奥さんから。」との指示。どうやら私とGさんとでロープを張って、それを伝ってかみさんを岸に渡らせるということみたいだ。
「なるほど!」
急流に流されそうになりながらも、まずはかみさんが助けられた。
次は自分の番、やっぱりロープを掴んで川に飛び込むしか方法はないみたいだ。ロープをしっかりと掴み急流の中へ。すぐに体が流される。げっ、やっぱり落ち込みにのみ込まれるんだ!
覚悟を決めてそのまま流されると、落ち込みに落ちたあと体がスーッと岸に寄っていった。
「あっ、そうか!」
岸でロープを固定していれば、それに掴まっている人間は自然と岸に寄っていくものである。
Gさんに感謝して川下りを続けた。
一度水に入ってしまうと、体力も消耗される。かみさんのパドリングにも力がなくなり、簡単に岩に張り付いてしまう。
「あ〜、またやっちゃった」
今度はカヌーから降りなくても何とか岩から外れそうだ。
しかし、外れたのは良いけれど、カヌーが後ろを向いてしまった。慌ててその下で向きを変えようとしたが、流れに押されてしまって巧くいかない。
瀬の中で横向きになるのだけは避けたいので、「もうこのまま下るぞー」と声をかけた。
後ろを向いて岩の位置を確認しながら、バックストロークで瀬の中を下る。半分やけくそだが、意外とこれでも何とかなるものである。
最後の岩をかわして、後ろ向きのままエディキャッチ!
下で見ていた他のメンバーから歓声が上がった。
もう〜、こんな事で歓声を受けても全然嬉しくないのだ。
その後も同じような瀬が次々と現れる。
「右だ」、「いや、左だ」、かみさんとの息も全然合わなくなってきた。前方に二つの岩。あ〜、またぶつかる〜。何を思ったか、かみさん、ど真ん中のその岩と岩の間に突っ込んだ。
「結局ここかよ〜!」
アリーの横っ腹を岩にガンガンぶつけながら、何とかその間を通り抜けることができた。
その後も、岩を避けると言うより岩にぶつかりながら瀬の中を通り過ぎる。まるでスキーのスラロームの選手が旗門をなぎ倒しながら滑っているような感じである。
アリーでこんな下り方をして大丈夫なんだろうか?
「もうそろそろゴールですよ!」の声を聞いてホッとした。
いつの間にか渓谷を抜けて、周りの風景も広々としたものに変わっていた。
何とか沈もしないで、鵡川を下り終えることができた。アリーも底が少しへこんだものの、穴はどこにも開いてないようだ。
まさかアリーでここを下れるなんて、思ってもみなかった。
Nさん夫婦もTさん夫婦もとても嬉しそうだ。
スタートしてから4時間、心身ともに疲れ果てていたが憧れの鵡川を下った満足感はとても大きかった。
もう少し水量が増えれば、次回こそはニニウ〜福山にチャレンジしてみたい。 |