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空知川

(国体コース 〜 山畔橋)

 今回のカヌークラブ例会は空知川の国体コース、この区間は1昨年の例会でも下っているので、2度目のチャレンジである。
 前回は、右も左も解らないような状態で、他のメンバーからは「エッ!、本当に国体コースを下る気なの?」などと脅かされながら、何とか下った区間だ。
 さすがに今回は、少しは自信も付いてきたので、前回ほどの不安感はないが、それでもやっぱり緊張感に包まれる。
 新入会員も増えて、今回が国体コース初チャレンジというメンバーも数人いる。
 夫婦でカナディアンに乗るTさん、ファルトボートで初チャレンジのIさん、大柄な体でカナディアンを操るFさん、例会初参加のカヤックのYさん、そして私と一緒に入会したOさん夫婦とIさん夫婦、その他は皆ベテランメンバーだ。
 前日に他のメンバーと国体コースの上流から下ったカナディアンのFさんは、「昨日なんか5回も沈しちゃいましたー。」と嬉しそうに話し、まるで怖いもの知らずといった感じである。
 スタート前のミーティングでは、ファルトのIさんと初参加のYさんにはサポートが付くことになり、「後の人はまあ大丈夫でしょう。」とサポート対象からあっさりと外されてしまった。
 2年前に私たちが入会した頃は、例会の度に初心者のサポート体制を真剣に考えてくれていたが、今年になってからは、よほど危険な場所でない限りは勝手に下ってください的な雰囲気になって来たような気がする。
 もっとも、サポートと言っても、水の上に出てしまえば、後は自分の力で漕ぐしかないのだから、この程度で十分なのだろう。
 危険な場所では、ベテランメンバーが先回りしてレスキュー体制を作ってくれているので、何も心配しないで瀬の中に突っ込んでいくことができる。
 心配なのは、カヌーが壊れることだけだった。

 北落合橋の上流からスタートし、やや速い流れの中を下るとすぐに最初の難関、三段の瀬が待ちかまえている。
 前回ここでは、その落ち込みをさけて迂回する、俗に言うチキンルートの方を下って素沈してしまったのだが、どうせ沈するならば堂々と挑戦した方がましである。
 下見したときにアドバイスされたように、まずは隠れ岩の右側ぎりぎりから入って(フーッ、何とか入れたぞ)、次にV字型の波の頂点を目指して(ん?、波だらけでどれが頂点か解らん・・・)、その先、右からの波をかぶらないようにやや左を通って(オッと、この波は避けなくちゃ)。
 実際にはほとんど考えるような時間もなく、ボヨン、ボヨン、と言った感覚で波を乗り越えて、三段の瀬をクリアすることができた。
 緊張のためか喉がカラカラ、ペットボトルのお茶を飲んで一息つく

  三段の瀬(左の画像はクリックで大きな画像表示)


 次は渡月橋下の落ち込みに向かって難コースが続く。
 ここでのアドバイスは、右へ右へだ。
 間隔をおいて、順にスタートする。待機している場所からは最後の落ち込み部分までは見通すことができない。カナディアンのFさんが岩に張り付きかけたり、Iさん夫婦が沈して流れて行くのが岩の影から見えた。
 いよいよ自分たちの番だ。
 まずは流れを右に向かい、最初の瀬を無事に越えて右へ右へ、そこでは本流が左に流れを変えるので、左に流されないように右へ右へ、狭い岩の間を無事に通り抜けて右へ右へ、岩の間を通り抜けると最後の落ち込みが見えてきたが、そこでは再び本流が左から合流してくるので意識しなくてもカヌーは右へ押しつけられる。
 ま、まずい、ここでは左だろー。
 慌ててカヌーの向きを変えようとしたが、水流に押されてカヌーは右へ右へ。
 かろうじて、落ち込みの右岸側ぎりぎりに入ることができたが、そこは水深が浅くてカヌーの底をこすりそうだ。
 案の定、カヌーの中央部が岩に乗り上げ、その拍子でカヌーが垂直に立ち上がってしまったような気がした。
 実際にはそれほどの角度ではなかったかもしれないが、実際にかみさんは、カヌーの前方を飛び越えて、そのまま落ち込みの中へダイブしていった。
 かみさんがいなくなった分、カヌーも軽くなって岩から離れることができた。
 「ラッキー、これで俺は助かりそうだ。」
 一瞬そう思ったが、やっぱりバランスを立て直すのは難しく、私も頭から水の中にのみ込まれてしまった。もしも、かみさんが水中に潜った状態で、私だけがその上をカヌーで通り過ぎてしまったとしたら、その後のことを考えると、一緒に沈して正解だったかもしれない。
 完全に頭まで水没するような沈は初めての体験だったので、ちょっと焦ってしまう。落ち込みの下では、水流の関係で底の方へ引きずり込まれるという話を聞いていたので、必死にもがいて何とか水面に顔を出すことができた。
 すると、すぐ横にレスキューロープが投げ込まれたので、それにしがみついて何とか岩の上に這い上がることができた。
 かみさんはどうなったのかと後ろを振り向くと、落ち込みの下でカヌーと一緒になってプカリプカリと浮いていたのでホッとする。
 とりあえず、これで国体コースと呼ばれる区間は終わり。最後で沈してしまったが、三段の瀬をクリアできたので、満足感も大きかった。

  渡月橋落ち込み(クリックで大きな画像表示)


 この後は、噴水の瀬まではのんびりと下れるはずだ。前回の経験からそう思っていたが、なかなかどうしてその後も手強い瀬が次々に現れる。 水量が多いので波高もちょっと高くなっているみたいだ。
瀬の中で1 そんな瀬の一つでは、波を乗り越えながら無事にクリアしたと思ったら、カヌーの中に3分の2くらい水が入っていてビックリした。カヌーの中に水を入れないように下るのもテクニックの一つなのだろう。
 カヌーをひっくり返して水抜きしていると、底の部分に大きな裂け目があるのに気が付いた。渡月橋の落ち込みで岩に乗り上げた時に裂けたのだろう。持っていたガムテープで補修しようとしたが、完全に乾かないとガムテープはくっつかない。それほど急に浸水してくる訳でもないので、気にしないでそのまま下り続けることにする。
 瀬の中でバランスを崩し、かみさんの体が沈寸前まで傾くことが何回かあったが、その度に踏ん張ってカヌーを立て直すことができた。以前ならば、そのまま抵抗もできずにひっくり返っていたのに、この辺は経験によるものなのだろう。
 やがて見覚えのある場所が見えてきた。
 流れが真正面の岩にぶつかって、そのまま直角に左へ向きを変えているのだ。前回はここでも沈をしている。岩を避けるために必死になって左へ曲がろうとし、結局カヌーを傾けすぎて上流側へ沈してしまったのである。
 今回はそんな事態にならないように、早めにカーブの内側にカヌーを寄せようとしたが、予想以上に流れが速くてどんどん岩の方に押しつけられ、かろうじてぎりぎりでかわすことができた。
 さすがに今回の例会では沈脱者も多く、レスキューの方も大忙しである。
 その合間に、カヌーの穴を補修することにする。
 雲が切れて太陽の光が射してきたので、カヌーの底をその光に当てればあっと言う間に乾いてしまう。ファルトのIさんが補修用のテープを持っていたので、それを借りて補修したが、ガムテープよりはかなり強力な接着力だ。次回からは我が家でも用意しておいた方が良さそうだ。

 その先の瀬では、つい油断して、また隠れ岩に捉まってしまった。そのままカヌーは横を向いてしまい、バウとスターンが岩に引っかかり、完全な張り付き状態である。かみさんの椅子の下あたりが大きく盛り上がり、フレームまで曲がってしまっている。
 諦めて二人でカヌーから降り、岩から剥がそうとしたが、強い水流に押しつけられているので、なかなか動かない。やっと動いたと思ったら、水流に押されるカヌーにズリズリと体が引っ張られてしまう。
 かみさんが、「ちょっと、どうするのー!」と焦っているが、私は、そのまま流されてもすぐに岸に上がれそうだし、前方には他のメンバーもいるので、大して心配はしていなかった。
 結局、支えきれなくなって、カヌーと一緒に流されることにした。前方のメンバーは、我が家の危機には全く気が付いていないようで、別の方を見ている。ライフジャケットに付けてあるホイッスルを吹くとようやく気が付いてくれて、私とカヌーを引き上げてくれた。
 かみさんは、まだ最初の岩の上で固まったままだったので、そのまま流れに飛び込まさせて、流れてくるところを手を掴んで拾い上げてやった。
 ウーム、これを沈としてカウントすべきかどうか迷ってしまうところだが、岩を避けきれなかったのは大きなマイナスポイントだ。

瀬の中で2 昼の休憩で上陸する頃には、さすがに体も疲労困憊だった。
 おにぎりをむさぼるように食べて、10秒チャージのウィダーインゼリーを飲んで体力の回復を図る。
 最初は、「今回の川下りでは噴水の瀬に絶対にチャレンジするぞー」と、かなり張り切っていたのだが、これだけ流れに翻弄されていると、次第にその意気込みも薄れてくる。
 休憩も終わって、再び流れに乗る。そしていよいよ、噴水の瀬の手前までやってきた。
 まずは下見である。しかし、その下見の場所まで行くのも、川底はギザギザの尖った岩で、しかもヌルヌルしているのでとても歩きづらい。
 噴水の瀬は、前回来たときよりもその迫力を増しているような気がした。たとえ沈してもそのまま下流に流されれば良いだろうと思っていたが、複雑に重なり合う白い波を見ていると、そうでも無さそうな気がしてくる。
 ベテランメンバーが、下見もしないでそのまま突っ込んできたが、波に翻弄されながらも軽くクリアしていった。それを見ていると、一度落ちた後の横からの波がくせ者みたいだ。それに、最初に落ち込みに入る部分もかなり影響しそうだ。
 それ以上見ていても怖くなってくるだけなので、舟まで戻ることにする。
 するとかみさんが、泣きそうな顔で「絶対に嫌だ、こんなとこ下れるわけないじゃない」なんて、今更往生際の悪いことを言い始めた。
 「何言ってるんだ。こんな足場の悪いところでポーテージなんかできないだろう。行くしかないぞ。」と、そんなかみさんの態度は全く無視してしまう。
 そうしてカヌーに乗り込むと、かみさんもようやく決心を固めたみたいだ。
 レスキュー体制が整ったところで、初心者グループが順番にチャレンジしていった。
 ところがである。その難しい瀬を、皆軽々とクリアしていくのだ。沈は必至、チャレンジすることに意味があると考えていたのに、これはちょっと困った事態だ。
 また我が家だけ、沈することになるのか・・・。
 そう考えていた矢先に、Iさん夫婦が去年に引き続き見事な沈をしてくれたみたいだ。それで少し気が楽になって、我が家も安心してチャレンジすることができる。
 慎重にねらい定めたポイントに向かってカヌーを進める。
 その入り口に立ったメンバーが、場所を示してくれている。
 そしていよいよ落ち込みのすぐ前までやってきた。
 漕げ、漕げ、漕げーっ、と言う声を横に聞きながら、一気にカヌーは落ち込みの中へ。
 するとすぐに、突き上げられるようにカヌーは次の波の上に乗りかかった。
 一瞬カヌーが傾くが、パドルで波を押さえつけるように踏ん張る。
 なんだかロデオで荒馬に乗っているような感じである。
 自然に「イヤッホーッ」という声が出てきてしまう。
 そこをクリアしてしまうと、満足感とともに、なんだか呆気なかったような気がしてきた。
 後はゆっくりと、後続メンバーの様子を見学する。
 カヤック初参加のYさんがやってきた。Yさんは、ここに来るまでも沈の連発で、体力もかなり消耗しているはずなのに、それでも噴水の瀬にチャレンジする根性には感心してしまう。
 カヤックの操作もままならない状態で、明らかに変な場所から落ち込みに入ろうとしている。するとその前でバランスを崩し、ほとんど沈したような状態のまま白波の中にのみ込まれていった。
 多分、この次に下るときはYさんは見違えるくらいに上達しているのだろう。

  噴水の瀬チャレンジ!


 雲が晴れて、真っ青な青空が川の両岸のその濃さを増した緑の上に広がっている。
 今日初めて、ゆっくりと周りの景色を見渡す余裕ができた。
 ようやく静な流れになった川面の上を、空を見上げながら激流の余韻を感じつつ流されていくと、やがて上陸地点の橋が見えてきた。
 身も心も充実した川下りであった。
 帰ってからカヌーの補修をしなければならないのが、ちょっとだけ面倒である。

(2004.6.13)


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